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1988年3月30日 初版発行 |
『人間になりたがった猫』でお馴染みのロイド・アリグザンダーの短編集。8匹の猫が繰り広げる8つの物語が収められている。 権力や財産や地位に目が眩んだ人間、そして、それに気付きながらお追従しかできない取りまき達の挙動は、猫たちの目には滑稽に映るばかり。猫たちは、その智恵とユーモアと勇気と行動力、そして優しさで、人間が身に付けてしまった余分な心の脂肪と目の曇りをそぎ落とし、生きることの何たるかを教えてくれる。さらに、人間は人間であり、猫は猫であること、それも、一人一人、一匹一匹が固有の存在だという、当たり前でありながら忘れがちなことをも思い起こさせてくれる。 我々のそばにいてくれる猫たちは、我々の行動や胸の内をどのように見据えているのだろう。時折、猫になって、自分という人間を眺めてみると、脱線しがちな生き方の軌道修正ができるかもしれない。 愉快で軽快な筆致で書かれ、示唆に富む本書は、無味乾燥な道徳書よりはるかに多くを心の底に残してくれるだろう。 |