The Cricket in Times Square を筆頭とするシリーズの一冊。

タイムズ・スクエアの地下鉄の駅にある配管を根城に、仲良く暮らす猫のハリーとネズミのタッカー。ある日、ハリーが子犬を拾って来ました。家のない辛さを知るハリーとタッカーは、子犬を家族として迎えます。子犬は、タッカーがせっせと調達してくる食事のお陰で、どんどん大きくなるのですが、大問題が勃発します。配管の家に収まりきれなくなってしまったのです。子犬が安心して暮らせる家を他に探さなければなりません。ハリーとタッカーが思いついたのは、音楽家のスメドリーさんの家。ところが、そこにはすでに、お上品はシャム猫、キャサリンが住んでいたのです。さあ、どうする？？

Seldenの筆は、今回も読者を裏切らない。ストーリー展開の妙は言うまでもなく、ハリーとタッカー、子犬のハッピー、コオロギのチェスターに鳩のルールー、そしてスメドリー家のシャム猫、キャサリン……6匹の登場人物の性格描写は見事の一言に尽きる。また、一連の騒動の中で疎外感を味わいながら、精神的葛藤を続けるタッカーの胸の内は、読んでいて切なくなるほど。自分のことばかりに目を向けている現代人の、カサ付いた心に、慈雨のように染込む物語だ。