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The Cricket in Times Square 文:George Selden 絵:Garth Williams 発行所:Farrar, Straus and Giroux ISBN 0-374-31650-3 |
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コネチカットの田舎で生まれ育ったコオロギのチェスターは、ピクニックにやって来た人のランチ・バスケットにまぎれて、何とニューヨークに。タイムズ・スクエアの地下鉄の駅でバスケットから抜け出し、心細く羽を振るわせていたところ、この駅の新聞スタンドの少年に拾われます。この駅の土管を根城にしているネズミのタッカーとその友達、猫のハリーは、チェスターを大歓迎。慣れない都会の暮しに、失敗ばかりのチェスターですが、ひょんなことから音楽の天才とわかり…… 1950年代のニューヨーク、タイムズ・スクエアの地下鉄の駅を舞台に、3匹のドタバタ劇が繰り広げられる。自らが奏でる音楽のように澄んだ心の持ち主のチェスター、調子に乗り過ぎるけれど、いつも前向きで行動的なタッカー、冷静で哲学的でありながら心やさしいハリー、まったく性格の異なる3匹が、お互いを尊重しながら、深く心を通わせ、苦境を乗り越えていく。彼らを取り巻くさまざまな人間たちの人間模様も見事に描き出されていく。大都会ニューヨークの最も華やかなタイムズ・スクエア……その真下の地下鉄の駅……新聞スタンドと土管の中という狭く湿っぽく、薄暗い片隅に溢れるのは、他を思いやるあたたかさ……そのかけがえのなさを愛でるように、チェスターの美しい旋律が彩る……思わず涙する一冊だ。 |