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2. ことわざに見る猫<日本>

良きにつけ悪しきにつけ、我らが猫ほど多くのことわざや慣用句に登場する動物はない。遠い昔から我々の生活に深く入り込んでいたことの現れだろう。ことわざ・慣用句に見えかくれする古人の猫に対するイメージを探ってみよう。

●Illustrated by Tengoku-ya Uran



<50音順目次>

猫足
猫面
猫が熾(おき)をいらうよう
猫が胡桃を回すよう
猫が肥えれば鰹節が痩せる
猫が茶を吹く
猫が手水(チョウズ)を使うよう
猫被り
猫毛
猫叱るより猫を囲え
猫舌
猫舌の長風呂入り
猫背
猫と庄屋に取らぬは無い
猫撫声
猫に会った鼠
猫に傘(からかさ)
猫に紙袋(カンブクロ)で後退り
猫に九生あり
猫に小判
猫に栄螺
猫に木天蓼
猫の魚辞退
猫の寒乞い
猫の食い残し
猫の子はなぶると痩せ、犬ころはなぶると肥ゆる
猫の逆恨み
猫の尻尾
猫の手も借りたい
猫の鼠を窺うよう
猫の鼻
猫の鼻先に鼠を置くよう
猫の歯に蚤
猫の額
猫の額にある物を鼠が窺う
猫(の額)に鰹節
猫の前の鼠の昼寝
猫の目
猫は三年の恩を三日で忘れる
猫は長者の生まれ変わり
猫ばば
猫は三月を一年とす
猫跨ぎ
猫耳を洗うと雨が降る
猫も杓子も
猫を追うより鰹節を隠せ
猫を殺せば七代祟る
猫を一匹殺せば七堂伽藍を建立せるより功徳あり
鼠捕る猫は爪を隠す

参考文献

◆「猫も杓子も」
なにもかも、だれもかれも、の意。すぐに右へならえして流行に翻弄される日本人の国民性もあってか、今でも良く使われる言い回しだ。

生まれては死ぬるなりけりおしなべて
        釈迦も達磨も猫も杓子も

と一休禅師の歌にも見えるこの言い回し、鎌倉時代の末頃にはすでに使われていたようだ。それにしてもなぜ猫と杓子(水や汁ものやご飯などをすくうしゃもじ)なのだろう?語源にはさまざまな説がある。
「猫のちょっかい杓子に似たればかく言ふなるべし」とは江戸時代の学者の説
「女子(めこ)も弱子(じゃくし)も」(=「女も子供も」)の意だとするのは落語「横丁の隠居」の説
このほか、「禰宜(ねぎ)も釈氏(しゃくし)も」(=「神も仏も」)が変化したとする説、「寝子(ねこ)も赤子(せきし)も」(=「寝ている子供も赤子も」)が変化したとする説等々がある。また、杓子は家庭の主婦をさし、猫まで動員した家族総出の意味だとする説もある。

「猫も杓子も」の語源と関わりがあるかどうかは分からないが、猫が死ぬとその亡骸を三叉路の道ばたに埋め、杓子など台所のものを立てるという風習が18世紀以前からあったようだ。鼠が台所を荒らすのを防いでくれたことに対する感謝の意を込めて、台所の物を立てたという。また三叉路は人通りが多いので、少しでも多くの人に拝んでもらうためだとか。

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◆「猫ばば」
悪事を隠して知らん顔すること、特に拾った物をひそかに自分の物にすることの意。猫には迷惑千万なこの言い回し、近世に入ってから使われるようになったらしい。
語源には2通りの説がある。
一つは「猫+糞(ばば)」とする説。猫がふんをした後、後足で土をかけて隠す習性があることから生じたというものだ。
もう一つは「猫+婆(ばば)」とする説。伝説によると、徳川時代の中期、江戸は本所にたいそう猫を可愛がっていた老婆がいたという。医者の祖母であったこの老婆は、30匹もの猫を飼っており、猫専用の部屋をあてがい、猫専用女中まで置いて猫の世話をさせ、大切に育てていた。ところが、この老婆にはとんでもない性癖があった。単なるもの忘れのせいか、承知の上での欲張りのせいか定かではないが、人から物をもらっても決して返礼せず、届け物を頼まれても自分の懐に入れてしまうというのだ。以来、いつからともなく「人の物を横取りする」といった場合に「猫婆」と言われるようになったという。
現在では、「猫+糞」を語源とする説が有力視されている。

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◆「猫被り」(猫を被る)
本性を隠して表面おとなしそうに振る舞うこと。また、知っているのに知らない素振りをすること。
語源には2通りの説がある。
一つは、猫のようにうわべだけ柔和にする意という説。猫をうわべだけ柔和で内心は貪欲だったり陰険だったりするものと捉えた表現には『猫根性』とか、『借りてきた猫』などがあるが、猫にとってはありがたくない言い回しだ。
もう一つは、ねこ(わら縄を編んだむしろ)を被る意とする説。愛猫家としてはこちらを推したいところだが…。
ちなみに英語では a wolf (fox) in lamb's skin (sheep's clothing) となり、我らが猫は無罪放免となっている。

Illustrated by Tengokuya-Uran

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◆「猫に小判」
どんな貴重なものでも、どんな高価なものでも、その価値のわからない者に与えては、何の役にも立たないという喩え。確かに猫に小判を投げてやっても、匂いを嗅いで、前足で砂をかける仕草をするのがせいぜいかもしれない。一方で、小判、大判を抱えた招き猫は、実に自然に見えるから不思議だ。
同義で、「猫に石仏」「猫に経」という言い回しもある。
また、物の価値がわからないという汚名を着ているのは、猫だけではない。「犬に小判」「犬の銭見たるが如し」「犬に論語」「馬の耳に念仏」「馬に天保銭」「馬の目に銭」「牛に麝香、猫に小判」「豚に真珠」など、身近な動物が槍玉に挙がっている。

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◆「猫に木天蓼」
大好物の例え。また、効果てきめんであるという意味にも使う。
確かに猫は木天蓼(マタタビ)が大好きで、日頃つんとすました顔をしている猫も、木天蓼を前にすると、見ているのも恥ずかしくなるような有り様。元気のない時にも、一嗅ぎでパワーアップ。効果絶大だ。
この言い回しは、「猫に木天蓼、お女郎に小判」とつなげることもある。遊女もお金が大好きということだが、日頃本性を現さない代表が猫とお女郎で、それも好物を前にしては相好をくずすということらしい。あるいは「猫」=「お女郎」「遊女」という連想が根深くあることから、ここでも仲良く並べられたのかもしれない。
そもそも「猫」は「芸妓」の異称として使われるし、「猫は傾城(ケイセイ=遊女)の生まれ変わり」とか、逆に「傾城には猫がなる」とか、「猫」と「遊女」は一心同体のような扱われ方をしている。また、「猫の鼻と傾城の心は冷たい」という慣用句もある。
ちなみに「お女郎に小判」の代わりに、「猫に木天蓼、泣く子に乳房」とつなげることもあるようだ。

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◆猫(の額)に鰹節
好物をそばに置いたのでは油断がならないことの例え。過ちをおこしやすい、危険な状況であること。
同じ好物でも、前述の「木天蓼」だと、効果てきめんの例えとなり、「鰹節」だと危険で油断できないことの例えとなるから面白い。確かに「木天蓼」は猫だからこそ喜ぶもので、しかも「取る」というようなアクションもしない。一方「鰹節」は人間にも大切なもの、取られては困るものだ。
取られては困るものは他にもあり、「猫に鰹節」と同義で「猫に鰹」、「猫(の額)に生鰯」、「猫に乾鮭」などがある。「猫に鰹節、道楽息子に金の番」という言い回しなど、そのニュアンスが良く伝わってくる。
「猫に鰹の番」「猫に魚(肴)の番」「猫に鰹節預けるよう」「猫の鼻先に鼠を置くよう」なども同義で使われる。
猫以外では、「金魚にぼうふら」「狐に小豆飯」「盗人に倉の番」という表現があるが、圧倒的に猫をからめた言い回しが多い。身近にいて、人間の食べ物を失敬していくのは、やはり猫。「泥棒猫」と言われても仕方がないかもしれない。

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◆猫に栄螺(サザエ)
好物だが手の出しようがないことの例え。
確かに猫に大好きなサザエを預けても、自分では殻から出して食べることはできない。
「猫」の後に好物を続ける表現も、何を続けるのか、「木天蓼」なのか「鰹節」なのか、はたまた「栄螺」なのかで、意味が違ってくる。実に興味深い。

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◆猫が肥えれば鰹節が痩せる
猫が大好きな鰹節をかじってころころ太る一方で、かじられた鰹節は痩せ細っていくことから、一方が良ければ他方が悪くなる、一方に利があれば他方が損をすることの例え。

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◆猫を追うより鰹節を隠せ
猫に鰹節を食われてしまうからと、たえず番をして猫を追い払うより、鰹節の方を隠せばあっさり問題は解決することから、些末なことより、根本を正せという例え。「猫を追うより皿を引け」「猫を追うより魚を除けよ」も同義。

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◆猫叱るより猫を囲え
猫に魚を取られて猫を叱るより、取られないように用心することが大切、問題が起きる前に予防策を講じよ、という意味。
実際に猫を囲うかどうかは別として、予防策を講じることこそ、猫と共に暮らす者、常に念頭に置いておかなければ!

Illustrated by Tengokukya-uran

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◆猫の魚辞退(うおじたい)
猫が、大好きな魚を断る、つまり内心は欲しくてたまらないのに、遠慮すること。こんなことは長続きしないから、当座だけで長続きしないことの例えにもなる。
「猫の精進」「猫の魚を食わぬふり」「猫のうるめ斟酌」とも言う。
Neco家の猫の中には「魚?何それ?」と、本気で辞退しているのもいるけど…

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◆猫跨ぎ
魚の大好きな猫でさえ、一瞥もくれず跨いで通るほどまずい魚という意味。また、魚を食べるのが上手な人が身をきれいに取って食べ、骨だけ残った様子を形容するときにも使う。
猫は猫でも手で魚を押さえて上手に食べ、猫が跨ぐほど見事に骨だけを残す子もいれば、見るも無惨、ぐちゃぐちゃにしちゃう子もいる…器用、不器用は猫にもあるのでしょうか。

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◆猫の鼠を窺うよう
猫が鼠に飛びかかる時の、いったん体を伏せて狙いをつけ、一気に飛びつく様子のこと。獲物を狙う様の例え。これが猫ではなく虎だったら、『虎視眈々』となるのだろうが。『猫が鼠を狙うよう』も同義。

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◆猫に会った(逢うた、逢いし、追われた)鼠
鼠が猫に会ったように、すっかり畏縮して何の策略も浮かばず、逃げることも手向かうこともできないこと。危難から逃れられない様子を例えていう。
「雀のはやぶさを見、鼠のねこに遇うごとし」などと使われている。
『猫の前の鼠』も同義で、「猫の前の鼠、鵜の前の鮎」とつなげると、一段と味わい深い。
『蛇に睨まれた蛙』の方がポピュラーでしょうか。

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◆猫の前の鼠の昼寝
猫のそばにいる鼠が、それとは知らずに昼寝をしていること。危険が迫っているのに気付かずに、油断していることの例えとして使われる。

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◆猫の額にある物を鼠の窺う
猫のすぐ近くにある餌を鼠が狙うようなもの、つまり危険を顧みない大胆不敵な行為、到底不可能なことを例えていう。また、自分の身分や実力を考えずに、大それた望みを抱くことの例えとしても使われる。
『猫の鼻先の物を鼠が狙う』も同義。

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◆猫の鼻先に鼠を置くよう
猫の鼻先に好物の鼠を置くようなもの、つまり非常に危険だということの例え。
近頃の飼い猫相手では、さしたる危険もないかもしれませんが…。

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◆猫と庄屋に取らぬは無い
鼠を取らない猫がいないように、賄賂を取らない庄屋はいないということ。
猫が鼠を取らないのは困りものですが、賄賂は取ってはいけません。それが逆になっているのが現状では…。

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◆鼠捕る猫は爪を隠す
才能のある人は、その力量をむやみに人前で示すことはないという例え。
『上手の猫が爪を隠す』『猟ある猫は爪を隠す』とも。『鼠捕る猫は音を出さぬ』『鼠捕らずが駆け歩く』も同義。
『能ある鷹は爪を隠す』の方が一般的でしょうが、私、本日よりこちらを使うことに決めました。

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◆猫が熾(おき)をいらうよう
猫が炭火に手を出しては、さっと引っ込めるように、ちょっかいを出すこと。「熾」は炭火、「いらう」はいじる、という意味。「猫が熾」とも。

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◆猫が胡桃を回すよう
猫が胡桃をもて遊んで回すように、じゃれついたり、ちょっかいを出したりすることの例え。

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◆猫が茶を吹く
猫が熱いお茶を吹いているような、滑稽な表情のこと。
猫はさすがに茶は吹かないけれど、想像するだけで愉快、愉快。言い得て妙とはこのこと?

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◆猫が手水(チョウズ)を使うよう
ほんの申し訳程度に顔を洗うことの例え。
neco家の猫たちは、それはそれは丁寧に顔を洗っておりますが…

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◆猫に紙袋(カンブクロ)で後退り
猫の頭に紙袋を被せると前には行かず後へさがることから、後退りすることの例え。「猫に紙袋」とも。
猫は紙袋が大好き。でも自分から入って行く時は前進するのに、無理矢理被せると確かに後退りしますよね。

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◆猫に傘(からかさ)
猫の目の前で、傘を突然開くとびっくりすることから、驚くこと、嫌がることなどの例え。
猫はびっくりすると垂直飛びをしてみたり、思いも寄らないところに隠れてみたり、猫のびっくりは面白い!!

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◆猫の食い残し
猫は全部きれいに食べずに食べ残すくせがあることから、食べちらかした様子の例え。

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◆猫に九生あり
猫は命が九つもあり、何度でも生まれ変わってくる。猫は執念深く、なかなか死なないということ。
A cat has nine lives. という英語の諺の訳か。

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◆猫の逆恨み
気持ちのねじ曲がった人が、助けてもらいながら、助けてくれた人を逆に恨んだりすることをいう。猫にはそのような陰険な性質があるとされ、このような言い回しの引き合いに出されている。
(なんでだろ〜、なんでだろ〜)

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◆猫を殺せば七代祟る
猫は執念深いので、殺すと子孫七代まで祟りがあるという俗説。

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◆猫を一匹殺せば七堂伽藍を建立したるより功徳あり
猫は執念深く、魔性のものであるから、一匹殺せば七堂伽藍(お寺に必要な七つの建物)を立てるよりも仏の御利益がある、ということ。
(え?猫を殺すと七代祟るんじゃなかったの?)
しかし、
猫は大事な経典をネズミから守った功労者。したがって、そのような功労のある『猫を殺しては七堂伽藍を建立しても功徳なし』の誤りだとする説もある。
(ふむふむ、そうこなくちゃ)

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◆猫は三年の恩を三日で忘れる
猫は三年の間飼ってもらった恩も三日で忘れてしまうくらい、恩知らずということ。『猫は三年飼っても三日で恩を忘れる』とも言う。『犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ』そうで、猫は正反対の悪者になっている。

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◆猫の寒乞い
寒がりで冬を嫌う猫でも、さすがに真夏には冬の寒さを恋しく思うということ。
寒がり屋でも暑い盛りには冬を恋しがるというたとえ。
neco家のお外組は、夏になると、木陰の土にお腹をくっつけるようにして、体のほてりを取っていますが、昨年、一昨年の猛暑の時は、さすがにエアコンの入っている室内に逃げ込んできました。

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◆猫の子はなぶると痩せ、犬ころはなぶると肥ゆる
猫の子は、いじり回すと痩せ、犬は逆に肥える。猫は人に触られるのを嫌い、犬はなでられるのを喜ぶということ。
そう言えば、neco家では30年ほど前、犬と猫、両方飼っていたのですが、この犬が子煩悩で、生まれて間もない赤ちゃん猫を母さん猫から借りてきては、舐め回していました。中型犬とは云え、犬の大きな舌で舐められる度に、赤ちゃん猫はゴロゴロと転がり、どんどん痩せていくように見えましたっけ。えっ?ただ濡れて痩せたように見えただけ?そうかもしれません。

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◆猫は三月を一年(ヒトトセ)とす
人間の三ヶ月は猫の一年にあたる。成長が早いということ。
『犬の一年は三日』という言い回しもある。
人間の三月が猫の一年ということは、猫は人間の4倍早く歳をとることになりますが、これは、猫/人間 年齢換算表に合致しています。猫は最初の1年で人間の18才になりますが、以降は一年に4歳ずつ歳をとると考えられています。昔の人の観察眼に脱帽ですね。

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◆猫は長者の生まれ変わり
猫は前世、長者だった人の生まれ変わりだということ。猫は長者のように、いつものんびりと眠ってばかりいることから。
確かに猫は省エネ生活が得意。それにしても、猫は『傾城』だの『おやま』だの、いろいろな者の生まれ変わりとなのですねえ。

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■猫面(ねこおもて、ねこづら)
猫のように寸の詰まった短い顔、またはその人のこと。

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■猫の額
面積の小さい土地のたとえ。
眉毛と髪の生え際の間が額ということになるが、確かに猫の頭髪の生え際はどこなのか、はっきりとしない。額があると言えばあるし、ないと言えばない。そんな、あるかないかの土地が「猫の額ほどの土地」ということになるのだろう。

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猫の鼻
いつも冷たいもののたとえ。
「猫の鼻と愛宕山とは真夏も冷ゆる」「猫の鼻と女の腰はいつも冷たい」「猫の鼻と傾城の心は冷たい」など、猫の鼻は土地であれ、心であれ、冷たいものと並べられて、いろいろな慣用句を生み出している。

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■猫の目
猫の目が明るさによって大きく形を変えることから、移り変わりが激しい、変化しやすいことのたとえ。
「猫の目玉と秋の空」「女の心は猫の目」などと使われる。

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■猫舌
熱いものを飲んだり食べたりするのが苦手な人をいう。
猫が熱いものを嫌うから、ということらしいが、熱いものを嫌うのは猫に限ったことではない。また、ある程度の温度のものなら、猫も食する。こうして何かと引き合いに出されるのは、やはり猫が昔から身近な存在だったからだろう。

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■猫舌の長風呂入り
ぬる湯好きの人は、入浴の時間が長いということ。
ぬる湯ではカラスの行水とはいかないから、当然のこととは思うが、「ぬる湯好き」を「猫舌」と表現しているのが面白い。
Necoは当初、文字通り「猫舌の人は長風呂だ」という意味だと勘違いして、これは言い得て妙と一人感心していたのです。Necoは鍋物苦手の超猫舌。そして時間さえゆるされれば、平気で2時間はお風呂に入っているという超長風呂。猫舌の人はみんな長風呂なんだと、納得していたのですが。本当のところはどうなんでしょう??

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■猫の歯に蚤
猫が蚤を噛みあてることはめったにないことから、まれなことや不確かなことのたとえに使われる。
「犬の蚤の噛みあて」も同義。

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■猫耳を洗うと雨が降る
読んで字のごとし、猫が手で耳の後ろから洗うような動作をすると、雨が降るということ。この成句、言い伝えは広く知られているが、猫の天気予報は日本に限らず、西洋にも伝えられている。猫が身繕いをしたり、草を食べると雨、水を飲むと雪、くしゃみをしても雪になるとか。

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■猫の手も借りたい
忙しくて人手が足りず、だれでもいいから手伝ってほしいということ。
平たく言えば、どんな役立たずでもいいから、手伝ってほしいということで、その役立たずの代表が「猫の手」ということになる。子供でさえ「猫よりまし」だそうで。なんで?と憤慨される愛猫家の方、お耳を拝借。同じ意味で「犬の手も人の手にしたい」という言い回しもあるようですよ。

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■猫の尻尾
あってもなくてもいいものの例え。
またまた、何の役にも立たないというようなことに猫が引き合いに出される。役に立たなくても、猫の子一匹いなかったら寂しいことこの上ないでしょ。猫の尻と言えば「猫の尻に(へ)才槌」という慣用句がある。これは、つりあわないことの例えだとか。

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■猫足
猫のように音を立てずに歩くこと。その歩き方。ぬき足さし足。
また、机や椅子の足などで、猫の足の形に似たもののこと。
金ぴかの猫足のバスタブなんて、憧れちゃいますよね。

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■猫背
背中が丸く曲がって、やや前屈みになっている姿勢、またその人のこと。「猫背中」とも言う。

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■猫毛
髪の毛が猫のように柔らかく、すぐにねてしまうこと。
neco家の猫の中には、ゴワゴワの毛の持ち主もいますが…。

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■猫撫声
猫が撫でられた時に出すような甘えく媚びを含んだ声。自分になつかせようとわざと出す、甘い柔らかな語調。
分かってはいても、猫撫声についよろめいてしまうのは、今も昔も同じと見える。『猫真似声に油断すな』とうい言い回しもあるようだ。貴兄諸君、御用心、御用心。

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【参考文献】
『日本国語大辞典』
2001年10月20日 第2版発行
編集:日本国語大辞典第二版編集委員会、小学館国語辞典編集部
発行所:株式会社小学館

『ことばの事典』
1989年7月15日 第一刷発行
著者:日置昌一、日置英剛
発行所:株式会社講談社

『日本の知恵を知る故事ことわざ』
1999年3月10日 第一刷発行
監修:谷沢永一
発行所:株式会社講談社

『罵詈雑言辞典』
1996年6月25日 初版発行
編者:奥山益朗
発行所:株式会社東京堂出版

『猫の歴史と奇話』
1992年10月1日初版発行
著者:平岩米吉
発行:築地書館株式会社

『故事ことわざ辞典』
1989年6月30日 第一版第11刷発行
編集:尚学図書
発行所:株式会社小学館

『新編 故事ことわざ辞典』
1992年8月1日 第一刷発行
編者:鈴木栄三
発行所:株式会社創拓社

『暮らしのことば語源辞典』
1998年5月25日 第一刷発行
編者:山口佳紀
発行所:株式会社講談社

『自然のことのは』
2000年11月10日 第一刷発行
構成・文:ネイチャー・プロ編集室
発行所:株式会社幻冬社

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