イエネコはリビアヤマネコを家畜化したものとされている。リビアヤマネコはイエネコとの間に繁殖力を持っており、頭蓋骨の形態がイエネコに類似しているのはリビアヤマネコだけである。また、イエネコの腎臓は濃縮した尿を作り出すが、これは、わずかの水分を効率よく使うのに適した機能で、祖先が水の少ない乾燥した砂漠地帯にいたなごりと考えられる。現在のイエネコの中ではアビシニアがリビアヤマネコに最も似ている。 さて、このリビアヤマネコの家畜化だが、その起源は古代エジプトに遡る。紀元前1500〜1300年代、第18王朝または第19王朝のものと言われているメリメリの墳墓から発掘された大理石の石碑に、ネコの絵が彫られている。一人の女性が腰掛けている足下に座っている一匹のネコは、明らかにイエネコである。 これ以前のものとして、紀元前5000年頃のイェリコ遺跡からはネコの遺体が発見されているが、これは野生のネコと見られている。また、起源前2000年代中頃の第5王朝、もしくは第6王朝の墳墓には首輪をつけたネコの絵が残っているが、これもネコを家畜化したというより、野生のリビアヤマネコを飼い馴らしたという域を出ないようだ。 リビアヤマネコの家畜化は、穀物をネズミなどのげっ歯類から守るためと考えられているが、その過程は、人がネコのげっ歯類捕食の能力を利用し、ネコが人を共生の相手として選んだという、半ば受動的なものだったようだ。また、エジプト人はタカやチーターと同じようにネコを狩猟にも使っていたとされる。 【参考文献】 『日本大百科全書』 『世界大百科事典』 『世界歴史大事典』 『ブリタニカ国際大百科事典』 『猫の歴史と奇話』 『痛快!ねこ学』 |