何と云うタイトルだったか、熊谷守一氏を特集したテレビ番組を見た。俗世の垢やしがらみと対極にある彼の生きよう、そこから生まれる猫の絵…心底唸ったnecoは、翌日さっそくネットで検索。豊島区千早にあった彼の住まいが、今は美術館になっている。さらに調べると銀座の画廊の名前が出て来た。『おいだ美術』。ここには藤田嗣治氏の作品やアンディ・ウォホールのピンクのSamのリトグラフもあるらしい。これで、次ぎのお休みの日程は決まり。新装なった丸ビルで昼食、そして銀座に出て画廊を訪ね、千早まで足を伸ばすことにした。 『おいだ美術』に入ると、いきなり藤田氏の猫たちが目に飛び込んで来た。何と、藤田氏の企画展の真っ最中だったのだ。そう云えば、『猫びより』も『NECO』も、11月号で藤田氏の特集を組んでいたっけ。 木版、銅版、リトグラフ…少女に抱かれた猫もいたし、藤田氏の肩ごしに主人を見上げる猫もいた。『猫十態』、『猫の教室』などにまとめられている作品が、そう、20点はあったろうか。どの作品にも共通しているのが、眼光の鋭さ。子猫さえ、きっと見据えた視線の強いこと。頭の大きなプロポーションにぽわぽわした毛といった子猫特有の愛らしさの中で、その目の光りだけが突出している。子猫もこんな目をしているのだろうか…フラットに、客観的に子猫の目を見たことが一度もないような気がした。画廊の方が、「これは、可愛くて人気があるんですよ」と語った言葉が何とも浮いて聞こえた。『猫びより』の中に、『猫は猛獣の盆栽だ』という言葉を引用した記述があるが、実に言い得て妙だ。 鋭い目をしながら、あたたかく、静かに輝いて見えたのが『茶色の猫』。オリジナル・サイン入りのこの作品、ゼロがいっぱいで、買う買わないと迷う必要がなくて、ほっとした。 この企画展は11月一杯開催されている。折りを見て訪ねてみてはいかがでしょうか。 おいだ美術:東京都中央区銀座2-7-11 銀座ブラジルビル4F 時間が経つのは思いのほか早く、熊谷守一氏の美術館は次の機会に譲ることにして、画廊を後にした。 |