映画より帰り道:『猫の恩返し』鑑賞

8月8日、ぱぱちゃんと連れ立って銀座へ。目指すはみゆき座『猫の恩返し』。真夏の昼下がりの銀座は、あまりの暑さに音が吸収されてしまったようで、レストランの窓越しに見る街並は、さながら無声映画の一コマのようでした。

皆さんは『猫の恩返し』、ご覧になりましたか?どんな感想を持たれたでしょうか?Necoにとっては、期待が大きすぎたのか、正直、物足りなかったなあ。その理由は大きく二つあるように思います。第一に、あらすじを知っているNecoでさえ、ストーリーが繋がりにくかったこと。主人公ハルの人物描写が希薄で、『今を生きる』というこの映画のテーマが、バロンの口から一言唐突に語られておしまい、という感が否めません。第二に、『猫』が『猫』である必然がなかったように思うのです。身近にいる生き物を消去法で消していったら猫になった、という感じで、『ジャングル大帝レオ』がライオンでしかありえないような必然、つまり猫でしか表現できない何かがなかったように思うのです。

ぱぱちゃんと二人、言葉少なに、ちょっぴり肩を落としての帰り道、泰明小学校と銀座ファイブの間の遊歩道を通って有楽町に出ることにしました。足を踏み入れた途端、道ばたに茶トラを発見。あっ、もう一匹茶トラ。夏の陽射しを避けるように木陰に座り、こちらを見ています。映画館でポップコーンくらい買っておけばよかった、と後悔しつつ顔を上げると、5、6m先で黒に白のぶちが2匹、遊歩道のまん中から銀座ファイブの2階の窓を見上げています。思わずその視線を辿ると、一人の女性が猫たちと無言の会話をしていました。このひとときは毎日、毎日繰り返されているのでしょう。彼らは、手で掴めそうなほど確かな絆で結ばれているようでした。やがて、その窓からパンの雪が舞い降りてきました。先程の2匹は、ガツガツするような素振りは見せず、一つ一つを大切そうに食べています。そのパンの雪降る中に、どこからともなく現れた三毛と白と茶のぶちが加わりました。この光景を振り返り振り返り歩を進めると、さらに茶トラ2匹と遭遇。声を掛けながら通り過ぎようとした時、彼らはやおら立ち上がり、そろって遊歩道を歩いて行きます。どこへいくのかしらん、猫の集会?振り返って見ると、いつ、どこから現れたのか、エプロン姿の女性が猫たちに囲まれていました。ディナータイムのようです。こんな心和む光景に出会えたのも『猫の恩返し』のお蔭、と妙に納得、そして感謝。わずか数十メートルの間に出会った8匹の猫たちは、痩せぎすではあったけれど、毛づやの良い、凛とした8等身の美男美女でした。

顔に笑みの残るぱぱちゃんとNecoが家のドアを開けると、4等身の猫たちが出迎えてくれました。