写真展 − 猫と人が紡いだ日々

東京駅ねこ物語

2011年10月11日

 

2012年10月1日、復元された東京駅赤レンガ駅舎がお披露目となった。1914年に創建された、南北にビクトリア調のドームを持つ威風堂々たる駅舎は、1945年、戦災により一部を焼失。1947年に修復工事を行ったが、予算不足の為に、完全な形での再建は断念せざるを得なかった。それから60年後の2007年、創建当時の姿への復元、保存工事に着手。5年の歳月を経て、完成となった。

間もなく創業100年を迎えようとしている東京駅舎は、いったいどれほどの人を抱きかかえてきたことだろう。人ばかりではない。つい最近まで、駅舎には駅員さん黙認の猫達が居着いていた。赤レンガ駅舎の向かいにあった公園にも猫達が暮らし、駅に向かう人、駅が吐き出す人を眺めていた。彼らは、ホームレスやボランティアの人々の献身的な庇護の元に命をつなぎ、東京駅の景観の一部として溶け込んでいた。しかしながら、復元工事が完成を見た今日、猫達の姿はない。

この写真展は、ありし日の東京駅の猫達と猫が結んだ人との縁を映し出したものである。

太田威重 金森玲奈 森正澄 写真展
 東京駅ねこ物語-猫と人が紡いだ日々-


 東京駅の赤レンガ駅舎が復元され賑わっている。
その一方、復元前の駅舎とその目の前にあった公園に、数年前まで多くの猫が棲みついていたのを知る人は少ないのではないだろうか。捨て猫をルーツとする、それらの恵まれない猫の力になりたいという思いは、いつしか年齢も職業も様々な人々の心を動かし保護活動が始まった。
 そのひとり高校教師の森正澄は1994年から2004年にかけて、公園に捨てられた猫と駅舎に棲む猫の日々の餌やりと周辺の清掃、健康管理を行うかたわら歴代の猫の姿をカメラに納めた。
 東京と猫をテーマに写真を撮り続ける写真家の太田威重は2001年、雑誌「東京人」の取材をきっかけに公園の猫と人を撮影。掲載されたその写真を見て公園を訪れた当時写真大学生だった金森玲奈は、ボランティア活動を手伝いながら捨てられたばかりの子猫サクラの成長に寄り添った。
 そんな東京駅の猫と人との交流は2007年頃まで続いたが,やがて「丸の内再構築」に伴う周辺の開発が加速するにつれ猫は居場所を失い、工事現場と化した駅前には人も近づくことができなくなった。
 金森は猫エイズを患ったサクラを家に引き取りその最期を看取った。今はプロの写真家として活躍している。
 太田は相変わらず東京を歩き回り、写真展や新聞、雑誌などで作品を発表している。
 実家である豊橋の寺に戻った森は10数匹の猫を世話している。東京駅から連れ帰った猫は15才になった。

 これはそれぞれのスタンスで東京駅丸の内口に集った猫と人に関わった3人による写真展である。


褐色の化粧レンガに白い花崗岩を帯状に配し、見事なドームが天空を刺す重厚な駅舎……100年前をたぐり寄せる喜びの陰で、猫達はこの場をあとにした。新しさを求めても、過去を蘇らせても、猫たちが消えていく。したたかな猫のこと、それも一時のことかも知れないが……。今は、過去となった、猫と人と東京駅を振り返ってみよう。


会期:2012年12月10日(月)〜16日(日)11:00〜18:00(最終日〜16:00)会期中無休
会場:文京シビックセンター1F アンテナスポット
   文京区春日1-16-21 Phone 03-3812-7111

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