5月7日に親戚の結婚式があったこともあり、2006年の連休は4月29日から5月7日までの9連休となった。私がおとうさんの会社に居候を決め込んで以来の超ロング休暇だ。この機会に旅に出よう……と誰も思わないところは、12匹の猫たちと暮す我が家ならでは。旅に出なくとも、お楽しみはたくさんある。ここ数年は、もっぱら都内のランチ食べ歩き。今回も、浅草の老舗のすき焼きから始まった。 実は、私、浅草にほど近い下町育ちだ。幼稚園も浅草寺幼稚園!下町に住んでいたころは、緑のない窮屈な空間が好きになれず、山の手の暮らしに憧れていた。幼稚園もスクールバスで通い、お受験の末、遠い小学校に入学したために、地元の幼なじみがいなかったことも、生まれ育った土地に愛着を持てない大きな理由の一つだろう。 どんな土地も、旅人として眺めれば、違った景色に映る。観光客のような感覚で訪れる浅草もしかりである。 昔ながらの遊園地、花屋敷を通る。幼い頃、よく連れてきてもらったところだ。華やかなはずの遊園地なのに、何となくわびしい気持ちにさせられた場所だ。この小さな遊園地で嬉々として遊んだ自分の姿を、記憶の中にいくら探しても見つからない。だから懐かしさも湧かない。 観音様にお参りしたら仲見世……だが、残念ながら大変な混雑で、車椅子初心者の私たちは気後れした。そんなデコボコ・コンビの私たちに、「こんにちは」と声を掛けてくださる人がいる。目を上げると、声の主は、車椅子を押す人だった。登山のときに交わす挨拶のように、自然で、あたたかく、勇気をくれる「こんにちは」だった。この日、何度も車椅子の方たちの明るい挨拶を受け、返す挨拶もだんだんと上手になった。 仲見世は諦めて、観音様の前を横切り、そのまま直進した。右手に邦楽の生演奏を聞きながら食事のできるお店を見つけたが、いかんせんお腹が一杯だった。その店の数軒先に『ふじや』という手ぬぐい屋さんがあった。2間間口の小さな店内は、お客さんで溢れている。 道々、2、3匹の猫に出会いながら、シャッターチャンスを逃してしまっし、仲見世の最中アイスも食べずじまいだったが、ちょっとした旅行気分にひたることができた。今度浅草に来たら、寄席によって一笑いしてこよう。 |