鳥取市若葉台南3丁目の町内「野良ねこ」捕獲に寄せて

2007年10月13日

秋風が立つと、じきにやって来る厳しい冬を思い、家のない猫たちがいかに過ごすか、胸を痛める人たちがいる一方で、糞尿で地域環境を悪化させる野良ねこなど、捕獲・殺処分にしてしまおう、という恐ろしいことが決議された町会があります。

左のチラシ(クリックすると拡大画像がご覧いただけます)にある通り、この処分が保健所という行政との恊働によるものとあっては、なおさら捨て置けません。

本件について、すでにご存知の方も多いと思いますが、私がこの一連の動きを知ったのは、最初の捕獲日9月30日の2、3日前。猫三昧仲間の方からご連絡をいただいてのことでした。大慌てで、反対の署名用紙に署名を集め、ファックスで鳥取市に送るのがせいぜいでした。

考えうる地域猫対策も十分に取らず、動物愛護法に反する捕獲・殺処分に行政自らが手を染めるというのですから、その波紋は日本中に及んだはずです。

鳥取県東部総合事務所 生活環境局 生活安全課は、寄せられた意見に対して回答書を発表。この乱暴な処置は当面見送られることになりました。

本件は、町内会+行政という目立つ図式だっただけに、何とか踊り場に持ち込むことができましたが、個人レベルの本音では、見送りに地団駄を踏む向きもきっと多いに違いありません。
動物愛護法という法律を持ち出すまでもなく、命を慈しむ心が一人一人に根付いていかない限り、野良ねこの問題は、いつも燻り続けるのでしょう。

私たちにできることは一体何でしょうか。

猫を疎ましく思う人と保護しようとする人は、つねに捩じれの位置、決して交わることがないように思われるかもしれませんが、一つ、同じ方向を向くことのできる魔法の言葉があります。

それは、どちらも「野良ねこ」がいなくなることを望んでいる、ということです。

野良ねこを見て、憎々しく思うか、痛々しく思うかの差でしかないのです。ご飯を与える側も、産めよ増やせよ、とご飯をあげているわけではないのですから。
このことは当たり前のようでありながら、案外、猫嫌いの人が気付いていない点です。

「だからね、これ以上野良を増やさないために、去勢・避妊をしているんです」
さらに、
「協力してくださいね」
と付け加えれば、普通の会話は丸く収まります。仮に協力が得られなくても、野良ねこを増やさないために、何かをする人と何もしない人の隔たりは感じてもらえるはずです。

ただし、この魔法の言葉も、ひとたび問題が起きて相対峙してしまったときには、効き目が鈍ります。
「これから生まれないのは結構なことだけど、今いる猫はどうするんだ。みんな死ぬまで糞だの尿だのを我慢しろ、というのか」
と来るでしょうねえ。
「ええ、そうですよ。私たちだってさんざん環境を汚染してるんですから」と言い返したくなりますよね。

だから、魔法の言葉は、最大限の効果を発揮するときに、精一杯使っておくことが大事だと思うのです。選挙ではないけれど、まずは浮遊層に関心を持ってもらい、命を慈しむ土壌を開墾していきましょう。この肥沃な土壌が広がっていけば、過激な発言を生むささくれた心も穏やかにしていけると思うのですが、いかがでしょう。

そして、魔法の言葉を使う側として、私たちのすべきこと、できることも今一度、考えてみましょう。

飼い猫:終生飼、できる限りの室内飼、去勢・避妊
地域猫:きちんとした給餌、避妊・去勢、健康管理と必要な手当、
    周辺の清掃
その他:気持ちの良い挨拶、ちょっと広めの門掃き

猫は、人と人をも繋いでくれる素晴らしい存在……それを信じて……

HOME > 猫通信 > 鳥取市若葉台南3丁目の町内「野良ねこ」捕獲に寄せて