東京のイチョウが色づき始める11月の半ばから、太田威重氏の写真展が開催される。 太田氏といえば、『東京在住猫』『東京−猫もよう』等の写真集でご存知の方も多いことだろう。 写真集のタイトルにもあるように、氏のテーマは、『猫』と『東京』。 息をつかせぬ程のスピードで変化し続ける東京……町も、ライフスタイルも、人の心も、時に流されるまま、行き先も分からずに、ただただ移ろっているように見える。 その東京にあって、猫たちは、生きるための知恵として、置かれた環境に適応しながらも、猫の猫たる本質を持ち続けている。 ガラス戸越しに、空を突き刺すような高層ビルを眺める猫たちの目の奥に潜む『猫』は、終戦の焼け野原を眺めた60年前の『猫』のままであり、江戸の商家の軒先で、土埃をあげながら行き交う大八車を目で追った『猫』そのものなのだろう。 太田氏が切り取った東京の猫を見るたび、私は、彼らに問いかけられているような気がする。「どこへ行こうとしているの?」「どこへ行きたいの?」と。 変わらぬ猫の目で、一度立ち止まり、今の自分を、自分の行く先を改めて見つめる……そんな大切な機会を与えてくれるのが、太田氏の写真だ。 時計を外して、出かけたいと思う。 |
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2006年11月17日(金)〜12月3日(日) 12:00〜19:00(休廊日なし) UP FIELD GALLERY 東京都千代田区三崎町3-10-5 第三原島ビル304 JR総武線『水道橋』駅西口から徒歩5分 半蔵門線『九段下』5番出口から徒歩15分 TEL&FAX 03-3265-0320 http://www.upfield-gallery.jp |