第8回 高円寺「ハート・トゥ・アート」

2004年3月27日

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昨年の8月、『猫日記』に「13時間」と題して、たった13時間だけ私と過ごしてくれたメグちゃんのことを書いた。そのメグちゃんを私のもとに連れてきたW氏が、高円寺「ハート・トゥ・アート」の主催者だ。

今回で8回目を数える高円寺「ハート・トゥ・アート」は、「出展する側にも、観る側にも敷居の低い美術展」を標榜し、様々なジャンルのアートを志す者に発表の場と目標とフィードバックを得るチャンスを与え、日頃アートにはとんと縁のない者に、日常の延長上で多くの作品に触れる機会を提供している。

第8回は、3月20日(土)と21日(日)の二日開催された。会場は、コミュニティセンターを中心に、公園、銭湯、路上といかにも敷居が低い。

20日は、何でこの日を選んで?と思うような雨。この日を皮切りに花梅雨のような天気が続くようになったが、それまでは記録的なカラカラ天気だった。W氏は雨空を恨めしく見上げていることだろうと思いながら会場に向かった。駅の北口には、すでに10数名が机に作品を並べている。大きな水たまりのできた公園では、模擬店が大急ぎでテントを張っている。コミュニティセンターに着いてみると、開場したばかりのはずなのに、多くの来場者でごったがえしている。お天気に恵まれた前回よりもはるかに人出が多い。W氏は、毎回毎回、主催者の意図と来場者の反応に大きな乖離があることを知らされ、悩み続けているというが、継続はやはり力なのだろう。書、絵画、造形、切り絵、イラスト、ファッション、ジュエリー…多くの作品を楽しく眺めながら、それでも『猫』のモチーフに素早く反応する自分に気付き、苦笑。

まずは、私がゲットした『猫』モノを紹介しよう。

これは、クボデラリョウさんの作品。『動物屋』という屋号を持つクボデラさんは、動物曼陀羅や十二支など、動物をモチーフにペンとパソコンを駆使して作品を造っている。




『唐猫』

サトウミヨさんの作品。このポストカードの原画である切り絵は、残念ながらすでにSOLD。構図、切り絵の技術ともに素晴らしく、是非とも原画を手にいれたいと思っている。


『A ANGEL CAT』

ナエムラハジメさんの作品。原画はボードにアクリル絵具で描かれている。一見、斜に構えたヤクザ猫のようだが、しばらく見入っていると、不器用な生き方しかできない、根っこのところが無垢な、愛すべき猫が見えてくる。タバコをくわえながら、ANGEL CAT と題されるのも頷けるような気がする。


『UNREMARKABLE OBJECTS』

サクマヨシノリさんの作品。サクマさんの作品は、缶コーヒーのプルトップや、落ち葉、石ころ、実際に使われることのなくなった古い道具などを素材に、すっきりと仕上げられている。当初の機能を持たなくなったものや、捨てられたものに向けられた、作家のあたたかい眼差しが作品から感じとれる。

こうした作品展を見るたびに、猫のモチーフがいかに多いか驚かされる。『戦士は犬を愛し、芸術家は猫を愛する』というように、猫の美しい体の線、しなやかな身のこなしは、それ自体が芸術的であり、芸術家が放っておくわけがない。だが、世に出る猫モチーフの作品は、猫を表現したくて、猫を追求し続けて生まれるものと、自分が磨いてきた技術や作り上げた作風を披露する場として猫を用いるものの二つに大別されるように思う。更に言えば、作品を商品と捉えたとき、『猫』を作っておけば、まず売れ残ることはない、という考えで生まれるものもある。私たち猫好きには、多くの『猫展』なるものが用意され、ひたすら猫を作り続け、描き続けるアーティストの作品に触れることが多い。それでも、その作品から、作家と猫との関わりようや、作品を作る動悸がもろに見えてくる。ここで紹介した猫作品は、いずれも、猫は ONE OF THEM の表現対象として生まれたものだが、中には、技術や作風を通り越して、しっかりと心を捕らえるものもある。これまで、猫は、猫と気持ちと時間を共有したものにしか描き出せないと思っていたが、そうとは限らないのかもしれない。瞬時に猫の本質を見抜き、猫と深く結ばれた人々の琴線に触れるような作品を生み出すことができるアーティストもいるのだろう。予見なく、唯一作品を見ることの大切さを考えさせられた作品展だった。

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