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なっちゃんの自己紹介 本名:夏子 |
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みなさん、こんにちは。あたし、『なっちゃん』です。夏にNeco家の家族になったから『夏子』って名前になったの。想像力のないこと!ここだけの話だけどね、『ロッキー』もおばあちゃんに『秋男』なんて名前つけられそうになったのよ。それじゃ、あんまりだということで、ままちゃんが『ロッキー』という名前をつけてくれるまで名無しのゴンベイだったの。今ね、『ロッキー』と『てっちゃん』と一緒に天国で遊んでたんだけど、「ごあいさつしなさい」っていう声が聞こえたから、お遊びを中断して自己紹介しまーす。 あたしね、善福寺公園の人目につかない所に置き去りにされちゃったの。そんなあたしをお散歩に来たおじさんが見つけて、みんなの目につくベンチの上に乗せてくれたんだ。段ボールのお家とミルクもプレゼントしてくれたの。でもあたし、ずいぶん弱っていたから、お腹はすいているのにミルクを飲む元気もなかったの。あたし、ベンチの上できちんとお座りして誰を待つでもなく、ただじっとしてた。そこにやって来たのがままちゃん。ダイエットだといって、朝1時間のウォーキングをしてたわけ。ままちゃんは迷わずあたしを抱き上げて、お家に連れ帰ってくれたんだ。お家ではすぐにお風呂に入れてくれたの。あたし、ちっちゃな体中にいーっぱいノミがいてね。ノミ取りシャンプーで洗っても、ままちゃんが必死に取っても、取りきれないほどだったの。元気がなかったのは、ノミにたくさん血を吸われちゃったからかもね。ミルクもご飯も何も食べられなかった。それでラブリー先生のところに連れて行ってもらったんだ。ままちゃん達は2、3日で退院できるだろうと思っていたみたいだけど、結局3週間も入院しちゃった。Neco家の人はね、ラブリーの先生があたしを一人占めしてるって、ひがんでたみたい。でも、それほど重症だったんだから。 |
退院してすぐに『ロッキー』がやってきたの。嬉しかったなあ。Neco家には『ファイト』と『マロン』というおじいちゃん猫がいたけど、世代が違い過ぎて一緒に遊べないんだもの。『ロッキー』とはほとんど同い年。いいお友だちになれると思って『ロッキー』に駆け寄ったのよ。でもね、『ロッキー』は目が不自由だったの。可哀想な『ロッキー』。面倒を見てあげなくちゃ。あたしもまだ生まれて4ヶ月位だったけど、お姉さんとお母さんの役を引き受けることにしたの。あたし、片時も『ロッキー』から離れなかった。だって、危ないもん。でもね、しばらくすると『ロッキー』も入院しちゃったの。目の手術をするんだって。『ロッキー』がいない間、一日ってこんなに長いものかって思ったわ。待ちに待った退院の日、あたしはいそいそと玄関にお迎えに出たの。でも『ロッキー』はあたしのことも目に入らないのか、気が狂ったように走り回るばかり。パニックになっちゃったのね。目が見えるようになって、びっくりしちゃったらしいの。おばあちゃんはオロオロしてるばかりだし、あたしが何とかしなくちゃ。あたしは『ロッキー』を追い掛けて、やさしく舐めてあげたの。そしたら『ロッキー』もあたしに気付いて、安心したみたい。改めて辺りを見回して、元の『ロッキー』に戻ったのよ。ただ一つ違うことは、目が見えるということ。それからというもの、『ロッキー』とあたしはお転婆といたずらの名コンビ。“カーテン登り”も“網戸へばりつき”も“障子破り”も何でも一緒。起きるのも寝るのもご飯を食べるのも一緒。ほんと、楽しかった。 |
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そうこうするうちに、『ロッキー』の弟妹6人がNeco家にやってきたの。ままちゃんは、あたしがさぞかし喜ぶだろうと思って「なっちゃん、赤ちゃんが来たよ」って声をかけてくれた。あたしを嬉しくて大急ぎで玄関に行こうとしたんだけど、なんと『ロッキー』があたしを追い越して玄関に走っていったの。『ロッキー』があんなに赤ちゃんが好きだったなんて知らなかった。あたし、赤ちゃんに触りたいのに、いつだって『ロッキー』がそばにいるんだもん。あたし、遠くから見てるしかなかったの。でも、『ロッキー』が幸せなら、それでいい。『ロッキー』が赤ちゃんと楽しそうに遊んでいるのを見てるだけでいいもん。 |
あたし、だんだんとお外に興味が湧いてきてね、「出して、ね、出して」と頼んでみたの。Neco家の人はみんな、最初渋っていたんだけど、根負けしたみたいで、ちょっとの時間、外に出してくれるようになったんだ。お家の回りをお散歩するだけなんだけど、お外の空気はおいしいし、お空の下は気持ちいい。そんなあたしが羨ましかったのか、『ロッキー』も必死で「外に出して」と泣くようになっちゃったの。目が見えるようになったとはいえ、視界が狭い『ロッキー』を心配したNeco家の人は、なかなか外に出してはくれなかった。でも結局『ロッキー』の粘り勝ち。短い時間だけど、お外に出してもらえるようになったの。あたしも心配だから『ロッキー』と一緒にお家の回りをお散歩。二人きりのすてきな時間が戻ってきたの。嬉しかったなあ。でもね、それもほんの束の間。ある日『ロッキー』は一人で、行ったこともない道路に出てしまったの。そして、あたしの前から消えてしまった。 『ロッキー』と一緒にあたしの心もどこかに行ってしまったみたい。体もどんどん痩せていった。みんなあたしを気づかってくれたけど、どうすることもできなかった。そして2週間が経ち、なぜかあたしも道路に歩いていってしまった。次の瞬間、あたしは会いたかった『ロッキー』の隣にいたの。『ロッキー』にはもう『てっちゃん』というお友だちがいて、あたしもすぐに仲良しになったの。ままちゃんがお別れの時に持たせてくれたオモチャで、3人仲良く遊んでるんだ。あ、『てっちゃん』と『ロッキー』が呼んでる。行かなくっちゃ。 それでは、みなさん、またね。 |
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