私たち人間と同様、猫もまた歯や歯肉の感染や疾患に冒されやすいのをご存知ですか?実際、5歳以上の猫の60%が歯や歯肉に深刻な病気を抱えていますし、この数字は、ソマリ、アビシニアン、バーミーズ、サイアミーズなどの猫種ではさらに上がり、80〜90%にも達します。これは、遺伝的にエナメル質に歯垢が付着する率が高いためです。また、慢性的に歯肉にウィルス性の感染を起こしている猫は、歯の病気の進行を速めますし、成長の過程で一時期栄養不良だった猫も、歯に問題を抱えている場合が多いのです。
歯、歯肉の病気は、時として、体の他の器官にも疾患を引き起こします。歯のエナメル質に付着する歯石にはバクテリアが大量に含まれています。バクテリアは口腔内ではどんどんと増殖し、それを感知した体は、バクテリアと戦おうとします。結果、歯肉炎が起こるのですが、ここには大量の血液が送られ、歯に付いているバクテリアが血流に入り込んでしまいます。血流に乗ったバクテリアは体中を巡り、他の器官--特に心臓の弁、腎臓、肝臓などの血液をろ過する器官、毛細血管の集まる肺や関節など--に留まって膿瘍を形成していきます。こうして、関節炎や心臓、腎臓などに重篤な疾患を引き起こすことになるのです。実際のところ、猫の腎疾患の主原因の一つは、歯の病気からくる感染なのです。
*歯、歯肉の病気の症状
歯の痛みがいかに辛いものか、私たちは良く知っていますが、猫の場合、その症状はなかなか見て取れません。おかしいな、と気付くときには、すでに病状はかなり進行しており、猫にあの痛みを与えているのです。
猫が見せる症状は様々ですが、口臭が一つの指標となります。口臭の原因は、口腔内のバクテリアによるものです。口の回りを前足で洗うような仕種が頻繁に見られたり、食事の食べ方がいつもと異なったりするのも症状の一つです。症状が進行すると、出血が見られたり、食欲が減退していき、やがて全く食べなくなってしまいます。
少しでも症状が見られたら、すぐに獣医師の治療を受けることになりますが、より早期に問題を発見するためにも、年一回は歯の健康診断を受けるようにしましょう。
*獣医師によるデンタル・ケア
定期検診で、獣医師は歯が動いていないか、欠けた歯はないか、歯肉は健康か、歯垢の付着具合はどうか、歯肉炎、歯槽膿漏はないか、等をチェックします。獣医師が必要と判断した場合、歯のクリーニングを行います。
獣医師によるデンタル・クリーニングは、麻酔下で行われます。猫が高齢だったり、他の病気を抱えている場合は、この麻酔に先立って血液検査をします。これは、腎臓、肝臓の機能が麻酔薬に対応できるかどうかを判断するためです。もっともデンタル・クリーニングで使われる麻酔は即日退院が可能なほど軽いものです。
麻酔がかかったら、歯垢を完全に除去し、歯の表面を平らに磨きます。凹みがあると、歯石がたまりやすくなってしまうからです。そしてフッ化物の濃縮液を塗布します。
この後、歯と口腔内を丁寧に診断します。
痛みや感染を起こしている歯は抜歯します。小さな穴は可能な限り埋めて、歯の寿命を伸ばすようにしますが、大半の猫にとっては、痛みや感染のある歯は抜歯した方が良いようです。また歯根が感染していたり露出してきた歯も抜歯します。歯はなくても健康な歯肉でいることが、慢性的な痛みや感染を抱えているよりはるかに良いということを心得ておかなければなりません。すべての歯を抜歯しても、ドライフードが大好きな猫はたくさんいるのです。(neco家のロッキーママもそうです!!)
抜歯したり、炎症をおこしていたりした場合は、数日間抗生物質を投与します。
*家庭でのケア
私たちが最後まで自分の歯で食べたいと願うように、猫たちの歯も何とか守ってあげたいものです。実は、家庭で猫の歯のケアをすることにより、歯や歯肉の疾患はかなり予防することができるのです。
家庭でのデンタル・ケアには、大きく二つあります。第一が週に2、3回の歯磨きで、もっとも効果的です。今では、猫が好む香りの付いた酵素入り歯磨きなど、さまざまな商品が市販されています。
第二がチュー・トイ(噛むようなオモチャ)や専用のフードを与えることです。これらは、歯垢を減らす助けとなりますが、疾患が進んでいる場合には、効果はあまり期待できません。
デンタル・ケアで大切なことは、幼少期から始めることです。歯磨きなどの習慣が楽に身につき、歯や歯肉の疾患の予防により効果が期待できます。もちろん、幼少期を逃してしまったらダメというわけではありません。気長に取り組んでいきましょう。
*歯磨きの仕方
【ステップ1】
まず、歯肉に沿って指を滑らせることから始めます。口を強く押さえたりせず、優しく扱うことが大切です。指先にツナの汁を付けるなどしても良いでしょう。
【ステップ2】
指にガーゼを巻き、水に湿らせて、歯肉のラインに沿って歯を擦ります。
【ステップ3】
ステップ1と2を通して、猫が口を触られることに慣れてきたら、歯磨きと歯ブラシを使い始めましょう。歯磨きも歯ブラシも猫用のものを使います。人間の歯磨きや塩、ベーキング・ソーダなどを使うことのないよう、注意してください。
まず、片側の上唇を持ち上げて見える歯を、歯肉側から歯の先に向けて歯ブラシを回転させて優しく磨きます。最初の内は時間は短くし、猫が嫌がったらすぐに止めるようにしましょう。1本しか磨けなくても良いのです。そして、歯磨きの後には、御褒美をあげるようにします。
【ステップ4】
慣れるにつれ、より多くの歯を磨かせてくれるようになるでしょう。外側から見える歯を全部磨かせてくれるようになったら、今度は口を開けて奥も磨くようにします。片手で猫の鼻の上をまたいで口の両側を押さえて口を開かせ、首を後ろに傾けます。錠剤を飲ませる時の要領です。そして素早くブラッシングします。十分奥まで磨けなくても、誉めてあげましょう。もちろん御褒美は忘れずにあげてください。この歯磨きを、猫が楽しみにしていること(例えば夕食)の前にするのも良いアイディアです。
猫の歯磨きは人間の歯磨きより楽だ、と言う方もいます。人間の場合は、歯の内外両方を磨かなければなりませんが、猫の場合、外側を磨けばいいのです。内側は、猫の舌がきれいにしてくれるからです。
一週間に2、3回、効果的な歯磨きができれば、歯磨きをしなければかかっていたであろう歯や歯肉の疾患の90%が防げるのです。
歯痛の辛さを愛猫に味わわせることのないよう、今日から始めてみませんか!!
【参考サイト】
http://www.catdoctors.com/
http://www.barrieranimalcareclinic.co.uk/Cdentalcare.htm
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