猫の健康管理
このコーナーでは、neco家の猫たちの実体験から、猫の病気や治療、健康管理について知っておきたい情報をお伝えしようと思います。 |
罹患猫 「らーちゃん、ご飯の時になると、お膝に来るのねえ。でも、らーちゃん必ずクシャミするんだもの。テーブルの方を向いちゃいやよ」という会話が数日続いただろうか。クシャミをすると言っても、私たちの食事に参加する時ぐらいだったから、食卓にのっている何かが鼻を刺激するのかな、程度に思っていた。ところが、そのクシャミが頻発し始め、鼻が詰ったのか、鼻呼吸の音が聞こえるほどになった。また、始終ぺろぺろと口舐めずりをする。口の中に鼻水が入り込んでいるのだろうか。クシャミの連発とほぼ同時に食欲も落ち、前日の2,3割程度しか食べない。背中の毛は一筋真っすぐに立っていて、皮毛全体がぱさついている。熱はないようだが、年の瀬ということもあり、病院が年末休暇に入る前に治しておこう、と病院に連れていった。らーちゃん、風邪ですよね。 猫も私たち同様、風邪をひきます。猫の風邪の症状も、鼻水、涙目、クシャミ、発熱など、私たちが風邪をひいたときと似通っています。また、猫は風邪をひくと、食事を摂らなくなることがよくあります。猫は、まず嗅覚によって食べ物を確認しますから、鼻水や鼻づまりで嗅覚にぶると、食べ物を識別しづらくなり、食べなくなってしまうのです。脱水症状には特に注意が必要です。特に腎機能障害がある場合、脱水症状は弱っている腎機能をさらにがくんと低下させてしまいます。 らーちゃんは、輸液、インターフェロン(抗ウィルス剤)と抗生剤の注射を受け、インターフェロンを入れたタリビッドを点鼻するようにとのこと。引き続き食事を摂らないようなら、強制給餌するよう病院食もいただいた。輸液と注射には、数日通うことになった。鼻風邪と軽く考えていただけに驚きもしたが、らーちゃんにとっては、脱水が一番大きな問題だったのだ。昨年5月に急性膀胱炎を起こした際の検査で、腎機能障害が進行していて、もって昨年一杯と言われていたのだから。脱水症状を早めに見つける方法は? 背中の頚下を摘んでねじり、手を放します。皮毛の戻りが鈍ければ脱水を起こしています。脱水がなければ、皮毛は瞬時に元に戻ります。 それにしても、らーちゃんはどこから風邪をもらったのかしら。Neco家の猫は、外には出ないのに……。私たちが運んできた? 猫の風邪の病原体は、ウィルス、クラミジア、マイコプラズマ、細菌などさまざまで、しかも多くの場合、単体ではなく複数の病原体の複合感染によって起こります。潜伏期間は2〜10日ほどです。これら猫の風邪を引き起こす病原体は種特有のものです。したがって、私たちが猫から風邪をうつされることもなければ、私たちの風邪が猫にうつることもありません。 私が接触している外猫さんも風邪はひいていないんだけど……??? 一旦猫風邪に罹ると、治療をして症状がなくなっても、病原体を完全に退治することはできません。病原体は体内の神経細胞などに潜み、キャリア状態となります。キャリア猫が、引越や日常的ではない行為によってストレスを受けたり、老化、気候の変化などで免疫力が弱くなると、再発してしまうことがあります。 そうか、らーちゃんは、ノラ時代に風邪に罹っていたのかもしれないんだ。でも、3種混合ワクチンは接種しているんだけどなあ。 猫風邪の病原体の内、特に症状を悪化させるウィルス、猫ヘルペスウィルスと猫カリシウィルスについてはワクチンがあり、3種混合ワクチンに含まれています。ワクチン接種により、病原体がこの2種のウィルスであった場合は、予防もしくは症状の軽減をすることができますが、前述の通り、病原体が別の株であった場合は、防ぎきれません。これは人間のインフルエンザの予防接種と同様です。 自宅に戻ったらーちゃんは、皮毛が随分落ち着いてきたが、その他の症状は相変わらずだった。 猫風邪は、5〜14日で症状が治まりますが、仔猫や老猫、猫エイズ等の他の感染症のある猫では重篤になりやすく、死に至る場合もあります。 らーちゃんは、老猫の上、腎機能も低下しているし、しかも猫エイズのキャリアだ。だが、症状は悪化しておらず、食欲も徐々に戻っているから、何とか回復してくれるだろう。今回の風邪の症状で一番目立つのがクシャミだが、人間の風邪のように飛沫感染するのだろうか。 猫風邪の直接的な感染経路は、飛沫感染です。つまり罹患猫の目(目ヤニ、涙)鼻(鼻水)、口(クシャミ、咳、よだれ)の分泌物から飛散した病原体を他の猫が吸い込んで感染していきます。また、感染猫が使ったフードや水のボールなどに接触するなど、間接的にも感染は広がります。したがって、複数飼いの場合、罹患猫を隔離しておくことが重要です。 わかっていても、neco家ではこれが難しい。どの部屋にも鍵はなく、閉まっている扉があれば、トンちゃんとモナコがすべて開けてまわる。こちらの認識が薄かったのだろうが、らーちゃんは、ほぼいつも通り、日中はシマとレオナ、コエリなどを抱いて2階のベッドで寝ていた。コエリは、未だに人を見ると逃げるので、避妊手術に連れていった時にワクチンを接種して以来、ワクチンが途絶えている。だが、シマ、レオナはもとより、コエリにも感染の兆候は見られなかった。 猫風邪は、症状が軽い場合は、治療しなくても3〜4日で治るものです。しかしながら、仔猫の場合、発症率も高く、罹患すると衰弱が著しく、命に関わることもあります。 日ごろの活発な動きを見て、仔猫は人一倍体力があるものと勘違いしていたけれど、やはり仔猫は仔猫。抵抗力も体力もまだまだ未成熟なのだ。らーちゃんと同様、クーちゃんも熱はないが、症状の進行は遥かに早く、また重いように見える。翌日は、らーちゃんと一緒に通院。らーちゃんは、今回が最後の輸液となったが、クーちゃんはさらに2回輸液に通った。幸いクーちゃんは、注射器での強制給餌が気に入ったと見え、良く食べてくれた。症状の進行も速ければ、一旦快方に向かうとその回復も速かった。発病4日目には、カニカマに反応して、自発的に一本食べ、これをきっかけに徐々に自分で食べるようになった。いただいた内服薬、セフゾンも回復の大きな力になったように思う。以前いただいたタリビットとノイチームは、今ひとつ効用が実感できなかったのだが、セフゾンは良く効いた。発病から10日、クーちゃんもすっかり元気になった。しつこく残るクシャミも聞かれなくなり、一件落着。 最後に猫風邪の中で、猫ヘルペスウィルスと猫カリシウィルスの引き起こす猫ウィルス性呼吸器疾患について見てみよう。 猫の流感、猫ウィルス性呼吸器疾患は、猫にとって今でも良く見かける病気です。健康な成猫にとっては、めったに重篤になることはありませんが、仔猫や老猫、すでに病気を持っている猫にとっては致命的になり得ます。 猫ウィルス性呼吸器疾患の内、特に問題となるのは、上部呼吸器疾患で、その80〜90%の原因となるのが、猫ヘルペスウィルスと猫カリシウィルスです。 猫ヘルペスウィルスが引き起こす疾患が猫ウィルス性鼻(腔)気管(支)炎、猫カリシウィルスによる疾患が猫カリシウィルス感染症と呼ばれます。 【猫ウィルス性鼻(腔)気管(支)炎】 【猫カリシウィルス感染症】 猫のほとんどは、生涯の中、特に幼年期に、この二つのウィルスのいずれか、あるいは両方に曝されます。一旦感染すると、そのウィルスを完全に排除することはできません。キャリアとなった猫は、長期間、おそらく生涯にわたってウィルスを飛散させ、他の猫への感染源となる可能性があります。 みなさん、ワクチンの接種をお忘れなく!!
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【参考文献】 http://www.petcaretips.net/cat_cold.html http://www.petwell.jp/disease/cat/nekokaze.html?pid=pw-ftxt http://hp1.cyberstation.ne.jp/sgx01424/sick8.html http://www.pet-hospital.org/cat-005.htm |