外猫家族に異常あり その3(H18.12.3)

今日も、お迎えはないんだろうなあ……そう思いながら、通路を覗くと、いつもの4匹が待っていてくれた。私の姿を認めて、塀の上のズレータは走り寄り、タマサとコアネも小走りにやって来て私の顔を見上げる。通路の奥で、ホワイトソックスが大きな声でなく。いつもの光景に、正直ほっとした。あのおチビは、どこかの飼い猫で、自分の家に戻ったのだろう。やれやれ、朝はこうでなくっちゃ。

と、次の瞬間、どこをどう通ってきたのか、長い尻尾をピンと立てて、おチビがダッシュしてきた。
「あっ、ご飯だー。急がなくっちゃ。今行くよー」
とその尻尾が言っている。
うそー。ま、いっか。

総勢5匹の朝食は、やはりしっくりこない。おチビは、一応一番遠くに控えているが、和やかな食事とは程遠く、おチビを除く4匹の食欲は芳しくない。4匹とも缶詰は大好きだが、ホワイトソックスに至っては、缶詰に異様な執着を見せるおチビにげんなりとしたのか、大量に残したまま、フェンスの隙間に姿を消してしまった。おチビは自分のお皿を平らげると、お腹が地面に付くほど身を低くして、こちらに近寄り、コアネちゃんのお皿に頭を突っ込んだ。「シャーッ」
さすがに、コアネちゃんが威嚇したが、おチビには、思ったような効果は上がらない。コアネちゃんは再度威嚇する代わりに、ついっと駐輪場の方へ行ってしまった。これが合図のように、タマサもズレータも、食事も中途半端なまま立ち去った。

ご飯がまだまだ残っている4つの皿を前に、おチビは、顔を上げることもなく、次から次へと缶詰だけを食べていく。
この食べっぷりから推して、どこかの飼い猫とは思えない。かと言って、人間を極端に怖がるわけでもない。突然に現れたその日から、私の膝元まで来て、ご飯を食べている。『元飼い猫』なのだろうか。ここに置いて行けば、食べる物には困らないだろう、と思った元飼い主が、置いていったのだろうか。それにしても、3日連続、どこからともなく現れ、ちゃんとご飯を食べていくとは。夕飯を担当してくれているステーキ屋さんによると、おチビは夕食も皆勤賞らしい。初日こそ、フェンスの間で昼寝をしていたが、その後は、食事の時間以外、おチビの姿は見えない。おチビの突然の出現と無遅刻無欠席は、謎だった。

とにかく、避妊・去勢をしなくては……膝の下で今も食べ続けるおチビに、そっと手を近づけた。気配では逃げなかったが、頭に手が触れた途端、さっと3歩身を引いた。それでも、またすぐにやって来て、食事を再開する。二度、三度、と繰り返したが、おチビの反応も全く同じだった。捕まえるのは簡単そうでいて、案外難しいかもしれない。キャリーの中に缶詰をてんこ盛りにして入ったところを御用、かな。