外猫家族に異常あり その2(H18.12.2)

明けて翌日の朝……

今朝は一体何匹で、どんな顔ぶれで待っていてくれるのだろう、と思いながら、猫ご飯バスケットを下げて道路から通路をそっと覗く。塀の上にも、その下にも、駐輪場にも、猫の姿はない。

そっと裏に回り込むと、タマサとコアネが奥の方に座っていた。台車の下にも小振りの猫影……昨日のおチビさんだった。ホワイトソックスとズレータの名を呼んだが、姿を見せなかった。タマサとコアネとて、おチビに気を許しているわけではない。そこに流れる空気は、こちらまで居心地が悪くなるほどだ。「まさか、このチビに、またご飯をあげるわけじゃないよね」と問い詰められているような気分になる。

それでも私は、お皿を3つ並べ、ご飯を入れ始めた。

おチビは逡巡することなく、とことこと台車の下から出てきて、取り敢えず3匹でご飯ということになった。

近くで改めて見ると、おチビは、思っていたより小さかった。目やにのない、きれいな顔だが、体はふっくら、というわけではなかった。

タマサとコアネは、おチビを目の縁で捉えながら、ピンとした緊張感の中で食べている。これでは味もしないことだろう。当の本人は、その場の雰囲気などおかまい無しで、みんなの3倍の早さで食べ続ける。缶詰を開けると、自分のお皿に入った大きな固まりをくわえて、二、三歩退き、そこで猛烈な勢いで胃袋に詰め込む。自分のお皿の缶詰がなくなると、コアネのお皿に頭を突っ込み、横取りだ。コアネの反応は、というと、そんなおチビにすっかり嫌気がさしたと見え、さっさとその場から立ち去ってしまった。タマサも同様で、いつも残飯整理を引き受ける2匹らしくもなく、ご飯を残したまま、数歩離れたところで、憮然としている。

思いがけず、お皿3枚を手に入れたおチビは、缶詰だけを選ぶように食べて、「あ〜あ、満腹!」とご満悦。食後の身繕いなど始めた。

自分の視界にだれかが居れば大人しいおチビだが、だれも見えなくなると、突然大きな声でなき始める。自分が歓迎されない客であるとも知らず、先住の4匹を兄ちゃん、姉ちゃんと思っているらしい。

ようやく、ホワイトソックスとズレータがいつものフェンスから顔を出した。和気あいあいと楽しい朝ご飯を邪魔されたが、寝床までおチビに奪われたわけではなさそうだ。ズレータが、身繕い中のおチビを発見。そっと傍に寄り、その鼻先に自分の鼻を近づけ、何やら確認している。「昨日のチビか。まだ居るのか」といったところだろうか。

一向に食べに来ようとしないホワイトソックスとズレータのために、たっぷり2匹分の食事を台車の下に置いて、仕事に戻った。

ホワイトソックスとズレータはちゃんと食事をしただろうか……しばらくして、台車の下のお皿が空になったか見に行った。遠目に、台車の下に猫が見えた。よしよし、と思いながら近寄ると、何と、おチビがまたまたつまみ食いをしていた。やれやれ。

その日、台車の下のご飯は、いつまでもそのままだった。