2005年如月猫模様 その2(H.17.2.14)
【タマサ】
会社の地域猫になった日:2004年7月
誕生日:2004年4月頃
<地域猫になった経緯>
ホワイトソックスの妹(姉?)、マーベリックの子供と思われる。チョコの子供たちを我が家に連れ帰ったのと入れ代わるように、隣のビルとの隙間で暮らすようになった。タマサも5匹兄妹だと思うのだが、コアネちゃんと2匹がここに住んでいる。他の3匹は、おそらくチョコ、マーベリックと一緒にいるのだろう。
正面から見るとコアネちゃんと見分けがつかないが、首の後ろが白く、そこに丸いボールのような模様が入っているので、『玉三郎』と命名。それが短くなって『タマサ』となった。
タマサは、我が家に連れ帰った4匹も含め、警戒心の強いこの一族の中で、一番人なつこい。このビルで仕事をしている人の中にも、タマサと遊ぶ人が数名いるから、おそらく名前はいくつも持っていることだろう。
<2005年如月近況>
朝食は私が、夕食はステーキ屋さんがあげているが、他にもときどき猫缶を差し入れてくれる人がいる。以前は、ステーキ屋さんが夜食まであげていた。人一倍食欲があり、食べるのも早いタマサは、人の分まで失敬する。お蔭で肥満街道まっしぐら。これはまずい、と誰もが思うほどになって、夜食は中止になった。
4匹の外猫は、毎朝、ご飯と掃除道具を持ってやって来る私を待っている。私の足音を聞きつけると、我れ先に走ってきて、食事場所まで先導してくれる。中でもタマサは私の横にピタリ寄り添い、足に擦り擦りしながら、一緒に歩く。私が食器やご飯をいれた袋を地面に置くと、タマサ、コアネ、ズレータの3匹は私の膝に手を掛けて、袋の中身を覗く。「今日のご飯、何??」というわけだ。みんな、ご飯を取り分けるのが待てず、最初にご飯が入ったお皿に全員が頭を突っ込む。勝つのはいつもタマサだ。食事が終わると、それぞれ身繕いに移る。「さあ、おいで、だっこしよう」私は手を伸ばす。だが、その手に寄ってくるのはタマサだけだ。コアネもズレータも、先程までの擦り擦りが嘘のように、さっと手の届かないところまで逃げていく。お腹が一杯になったら、お世辞はなし、ということのようだ。
膝に乗せたタマサをごしごしと撫でる。この寒空、乾布摩擦でもすれば、風邪を引かずにすむだろう。ごしごし背中を撫でながら、ひとしきりタマサと話をする。タマサはゴロゴロと喉を鳴らしながら、あまり面白くもない話につきあってくれる。膝から下ろす真際には、長い尻尾を持ち上げて、お尻を覗く。お尻の状態を見れば、お腹をこわしていないか、おおよその見当はつくからだ。
私の仕事に多少の余裕がある時には、しばし一緒に遊ぶ。近くに落ちていたペットボトルの蓋や、ワインのコルク、誰かが落とした甘栗などがオモチャ代わりになる。今朝は、家から持って来たシャボン玉を飛ばした。目の前をゆっくりと通り過ぎた大きな虹色のボールが、次ぎの瞬間どこかへ消えてしまう。不思議で仕方がないらしい。夢中で追い掛けるかと思っていたが、タマサはじっと座ったまま、シャボン玉を目で追い、ぱっと消えてなくなった地面をいつまでも見つめている。一日、シャボン玉を飛ばしていられたら、どんなにいいだろう。
仕事に戻ろうと立ち上がると、タマサも一緒について来る。私も名残惜しい。できることなら、事務所に連れてきてしまいたいが、それは叶わないこと。道路につづく通路のところで、タマサに「STOP!」と号令を掛ける。タマサは
STOP の意味をちゃんと理解している。その場所で座り、動かない。私は、振り返りたい気持ちを抑えて、その場を後にする。足音がしない猫のこと、ちゃんと止まっているか確認したくて、振り向いたことがある。タマサは、
STOP と言われた場所に座り、私を見送っていた。だが、振り返った私と目が会うと、一目散に走ってきた。だから、振り返ってはいけない。毎朝毎朝、後ろ髪を引かれる思いで、タマサと別れる。
【コアネ】
会社の地域猫になった日:2004年7月
誕生日:2004年4月頃
<地域猫になった経緯>
タマサの姉(妹?)。毛色がコエリちゃんと同じことから、コエリちゃんの姉(本当は従姉妹なのだが)、『コエリアネ』と命名。今は、それを縮めて『コアネ』と呼んでいる。ステーキ屋さんには『モンチッチ』と呼ばれているらしい。タマサと同じ経緯で、このビルの裏手で暮らすようになった。見た目はタマサと良く似ているが、警戒心が強く、その名の通り、タマサよりコエリちゃんに近い。
チョコの子供がまだビルの隙間にいた頃、一度姿を見せたことがあった。あの時も2匹いたから、もう一匹はタマサだったのかもしれない。何とか保護しようと思っていた私は、猫撫で声を掛けながら近付き、素手で捕まえようとした。まだ片手で持ち上げられる大きさだった。だが、右手で背中を掴まれたコアネちゃんの力は強かった。どこで暮らしていたか分からないが、親と一緒だったことは間違いなく、栄養は行き届き、家なし猫の弱々しさはなかった。コアネは、二度三度大きく身をよじって、逃がすまいと必死に捕まえる私の手から飛び出した。私の右手は、血まみれになり、しばらく経つとパンパンに腫れ上がった。その後、一度だけ、会社の駐車場の脇で見かけたことがあった。足下に置かれていたミルク皿が嬉しかった。
親猫たちの避妊・去勢、チョコの子供たちの保護に躍起になっている間、コアネと思しき猫たちを見かけることはなかったが、結局、タマサと二人が戻り、ホワイトソックスをリーダーに、ズレータを交えて4匹の協同生活が始まった。
<2005年如月近況>
警戒心が強いコアネちゃんも、今ではタマサ、ズレータと一緒に毎朝私を出迎えてくれる。私を見つけて、走ってくる姿の愛らしいこと。、一旦「お早う」の挨拶を交わすと、トットッと食事場所に向かって歩いて行ってしまうが、私がタマサと話しながらのんびり歩いていると、遅いとばかりにユーターンして来る。
コアネちゃんが愛想がいいのは、ご飯を食べるまで。ご飯を用意しようとしゃがみ込んだ私の足に擦り擦りしたかと思うと、私の手に手を掛けて、自分の顔にもっていく。ほんの少し前までは、ホワイトソックスと同じように、私の手に猫パンチを繰り返していたのだ。でも、それも甘えの第一歩だったようだ。
コアネはお腹が一杯になったら最後、なかなか捕まらないから、食事前にだっこすることにしている。鼻と鼻を付けてから、両腕でぎゅっと抱き締める。背中を摩ったり、お腹を撫でたり。それでも、私がちょっとでも動こうものなら、慌てて腕から飛び出してしまう。
食事が終われば、私から数歩離れたところで身繕いを始める。こうなると、もう頭を撫でることもできない。猫じゃらしには飛びついても、私の手が伸びればパッと飛び退く。時々、ステーキ屋さんの夕食を待って集まっているコアネちゃんたちに会いに行くが、この時も触ることはできない。お腹は空いていても、ご飯を持っていない私に愛想を振りまくわけにはいかない、ということらしい。そのちゃっかり振りが、また憎めない。
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