2005年正月猫模様 その2(H.17.1.14)

【ニセド】
neco家の家族になった時期:2000年4月10日頃
誕生日:2000年3月のある日
<家族になった経緯>
ロッキーの次ぎの回に、ロッキーママが産んだ6匹兄妹の長男(と信じている)。多産のロッキーママは早急に避妊の必要があった。そのためには、まず乳飲み子の6匹を保護しなければならない。2週間以上に及ぶ子猫保護大作戦が展開された。何しろ、ロッキーママは人が入ることのできないビルの隙間で子育てをしていたのだ。こちらの必死の試行錯誤に、ロッキーママは危機感を覚え、6匹を別の場所に連れていってしまい、しばらくは子猫の姿が視界から消えた。4月10日頃、ロッキーママが子猫を口にくわえて、一匹ずつ元の場所に戻しているところに遭遇。私はロッキーママの前にしゃがみ、黙って両手を差し出した。ロッキーママは、その両手の意味を深く考えるように、私の目をじっと見据えて身じろぎ一つしなかった。時が止まったようだった。長い沈黙と静止の後、ロッキーママは静かに私の両手の中に、くわえていた子猫を置いた。この日、ロッキーママが私に託した子猫は3匹。その中の一匹がニセドだ。
<2005年正月近況>
まっっっったりとした佇まい…長男の甚六とは、良く云ったものだ。ニセドが本当に長男なのか、長男として付合ってきたからそうなったのか分からないし、そもそも猫に人間同様の出生順による気質の違いがあるのかも不明だが、『長男の甚六』という言葉はニセドのためにあると云っても過言ではないほど、甚六振りを発揮している。
だが、らーちゃん、チビタに対しては、相変わらず違和感が拭えないようで、敵対感情というほどのものではないが、すれ違い様についつい猫パンチは出るし、傍に寄られればすーっと立ち去ってしまう。
ところが、新入り4匹が来てからというもの、ニセドの中に新たな感情が芽生えた。子猫たちは、優しいらーちゃんを慕い、駆け回っている時以外は、いつもらーちゃんの回りに寄り添っている。子猫を抱えて、満たされた表情を浮かべるらーちゃんを、1メートル離れた場所から横目で眺めるニセドは独りぼっち。子猫たちは間違ってもニセドの傍には寄らなかった。特に苛めたわけではないのだが。真冬に、南の窓からさんさんと降り注ぐお日さまを浴びて、子猫に囲まれ昼寝をするらーちゃんの姿に、ニセドは初めて優位を失った。自分の回りには、すきま風が吹いているような気分だったろう。目にすれば羨ましくて仕方ないのだろうから、いっそ見えないように離れていればいいものを、ニセドは生活の本拠も1階から2階に移し、なぜからーちゃんの近くにいるようになった。
そんなニセドの寂しく複雑な胸中を察したのか、救いの女神が現れた。賢く、母性本能豊かな猫、こえりちゃんだ。こえりちゃんは、子猫とチビタで混み合うらーちゃんの傍を離れ、3歩進んでニセドに添うように体を横たえた。ニセドは、独り寝の侘びしさから解放された。今日もこえりちゃんの温もりを感じながら、満足気に午睡を楽しんでいる。

【トンちゃん】
neco家の家族になった時期:2000年4月10日頃
誕生日:2000年3月のある日
<家族になった経緯>
ニセドと同様、ロッキーママが私の掌にのせてくれた子猫の内の一匹。赤ちゃんの時は目が小さく、ひょうきんな顔だちで、左トンペイさんに似ていたことから、トンちゃんと名付けられ、以来、別名一つ付くことなく、ずっとトンちゃんと呼ばれている。もっとも今ではロッキー家特有の大きな目をしているのだが。ニセドに次ぐ次男ということになっているが、もちろん根拠なし。

<2005年正月近況>
トンちゃんは、大人になることを放棄したらしい。体こそ立派な成猫だが、顔だちからして、子供のままだ。一旦寝付いてしまえば、ちょっとやそっとでは起きないが、寝付くまでは一苦労。ぐずる赤ちゃんそのままに、添い寝してくれそうな猫を求めてうろうろ歩き回る。一番のお気に入りはぬーちゃんだが、毎度トンちゃんに引っ付かれては、ぬーちゃんもたまらない。トンちゃんは、「ねえ、一緒に寝かせて。ね、いいでしょ」と、ぬーちゃんの耳の掃除をし、目を舐め、精一杯お世辞を使うが、その甲斐なく、後足で突っぱねられることもある。せっかく、あんなに舐めてあげたのに…。トンちゃんは、しぶしぶその場を去り、別の猫を探しに行く。最近では、小さなモナコに寝かせてもらっている始末だ。
トンちゃんの特技は、扉開けだ。左右の引き戸はもとより、ドアノブを押してドアも開ければ、前に倒す棚の扉、引き出し、何でもござれだ。把手のついている棚扉は、ちゃんと把手に手を通して人間と同じように難無く開けてみせる。この特技を持つのはトンちゃんだけとあって、脱走の手助けとして、みんなに重宝されていたが、換気ロックなるものが設置されてからは、活躍の場が断たれてしまった。以来、居間の扉を頻りと開けて(閉めることをしない)、人間の顰蹙をかうばかりとなった。
トンちゃんは、ランドセルを背負わせたら、さぞ似合うだろう。落第ばかりで、一向に進級しない悪ガキといったところだろうか。学校帰りにたわわに実った柿を失敬して、雷親爺にほうきを持って追い掛けられる、そんな姿が実にしっくりくる。逃げるトンちゃんの隣にいるのは、エリちゃんだろう。この2匹の運動能力は6匹兄妹の中で群を抜いている。だから、トンちゃんの遊びに付き合えるのはエリちゃんだけなのだ。その遊びが真剣勝負に発展して、「ハーッ」と威嚇しあいながら、上へ下へ、右へ左への大喧嘩になる。毎日の日課のようなものだが、あまりの凄まじさに、仲良し喧嘩と笑っていられないほどだ。
悪ガキとは云え、トンちゃんは「悪意」には無縁だ。らーちゃんやチビタに猫パンチを繰り出すときも、悪意などみじんも感じられない。それでもパンチを受ける側は辛い。
トンちゃんは、何かとお騒がせだが、人間に至福の時を与えてもくれる。その毛並みはベルベットよりも滑らかで、この世のものとも思えない触り心地に、静かに背中を撫でながらうっとり時を忘れる。冗談に一撫で300円という値段が付いているが、厳しい取り立て人がいたなら、正規料金を払ってでも、撫で続けることだろう。