正月猫模様 (H15.1.10)

本を読んでいれば誉められる時代を本嫌いで通したnecoは、その頃にあってしかるべき文学との出逢いがすっぽり抜け落ちたまま、現在に至っている。したがって、「文学」というものに大変なコンプレックスを抱えている。
このお正月はその文学の一つ、『我輩は猫である』を読破しようと固い決意をしていたのだが、繰ったページはわずかに6ページ。なぜなら、お正月の起きている時間のほとんど全てを、下手な麻雀に捧げてしまったからだ。

この連日の大麻雀大会を熱心に見入っていたのが、『宮沢さん』。『おばあちゃん』の隣の席に陣取り、じっと観察、研究を続けている。
「今度、一人メンバーが欠けたら『宮沢さん』に入ってもらおう」
というnecoの言葉に、
「こんな下手な麻雀、やってられないってさ」
と『ゆうちゃん』と『ぱぱちゃん』が異口同音に答える。
確かに『宮沢さん』の並外れた集中力をもってすれば、ほんの数分眺めただけで、すべてお見通しかもしれない。

『ゆうちゃん』の守神は『キャラリン』。『キャラリン』が起き出して、ガラス戸の所に座った途端に、勝ち始める。再びログハウスに入ると、これまたその途端に振り込み始める。ガラス戸の所に座るのは、ご飯を催促するため。ならばご飯はおあずけにして、ずっと座っていてもらおうと、『ゆうちゃん』は勝手なことを宣う。
年末は絶食状態で、心配を掛け通した『キャラリン』だが、年明けと共に、猛烈に食べるサイクルに入ったと見え、まぐろ缶、ビーフ缶、ドライフード、キャットミルクとフルコースを召し上がる。その量たるや、尋常ではない。ほんの一口食べ足りなくても、ずっとガラス戸の所に座り、時折後足2本で立って両手を高くガラス戸に当て、催促を続ける。食べるか、食べないか、いずれにしても両極端で、『キャラリン』とつき合うのは大変疲れる。しかも、日頃お世話になっている『おばあちゃん』やnecoにも未だ気を許さず、ご飯皿を置くだけで、飛び退く。
その『キャラリン』が、なんと、『ゆうちゃん』の事が好きだと判明。『ゆうちゃん』が指を差出すと、逃げるどころか、近寄ってきて口を近付けるのだ。『ゆうちゃん』が一人でいる時は、部屋の中にも入ってくると云う。そんなこととは、ち〜とも知らなんだ。お水の一杯もくれない『ゆうちゃん』のどこがいいんじゃ!!

1階で飽きることを知らずにジャラジャラと音をたて続ける人間4人に呆れたのか、静寂を求めてか、『ニセド』が2階のベッドへ避難するようになった。『ニセド』が2階へ行ったと知ると、これは大変と慌てて2階へ行くのが『らーちゃん』。『らーちゃん』は、自分は1階にいながら、2階は自分のテリトリーとして守っておきたいらしい。要注意人物は『ニセド』。ことあるごとにポカリと『猫パンチ』を食らっているのだ。その『ニセド』が我がテリトリーを侵略しているとなれば、穏やかではない。『ニセド』が恐いなどと、言ってはいられない。こうして『ニセド』を追って2階へ行く『らーちゃん』だが、何をするわけでもない。ただ、監視しているのだ。『ニセド』がベッドで寝入ってしまうと、監視役の『らーちゃん』の目もトロンとしてくる。こうして、不仲の2匹が添い寝することになる。

元1階組は、甘えん坊ばかり。せっかく人間4人が揃ったお正月、せいぜい甘えようと思っていただろうに、4人が4人とも日がなテーブルを囲んで動こうとせず、ちっとも構ってくれない。当てがはずれた甘えん坊たちは、「そんなら、ぼくたちだけで遊ぼう」と、じゃれあっている。じゃれているつもりも、知らず知らずに力が入り、やがて喧嘩へと発展。喧嘩となると、一番強いのは、体格ならぬ体重に勝る『ぬーちゃん』だ。『ぬーちゃん』にどんと乗られると、これはもう勝ち目はない。仲良し喧嘩には違いないが、ただならぬ気配に仲裁に入る者がいる。『チビタ』だ。『チビタ』は、組み合う2匹の間にずんずんと押し入り、片方に得意の「す〜りすり」をする。続いてもう一方にも「す〜りすり」。これで、両者とも戦意喪失。挙げ句の果てに2匹の真ん中でゴロンと横になられては、万事休す。喧嘩両成敗どころか、成敗することなく、見事に仲裁する、その素晴らしさ!見習わなくちゃ。

それにしても今年のお正月は寒かった。Neco家の中で一番の寒がりは、『隣の宮沢さん』改め『チビタ』。今では1階のストーブの前が指定席だ。お腹はホットカーペットでぬくぬく暖か、背中はストーブの熱風で火傷しそうなほど熱い。
1階の魅力はストーブとホットカーペットだけではない。猫のお皿にはいつもご飯が入っているのだ。一人では食べられない『チビタ』だが、兄ちゃんたちを真似て、ご飯皿に顔を突っ込むことが多くなった。いくら舌を繰り出しても、ご飯は口に入らず、『チビタ』が舐めた後のご飯は、重石で押したように真ッ平のぺっちゃんこになっている。それでも本人は、一人前に一人で食べた気になって、満足しているようだ。
1階にいる時間が長くなれば、元1階組との親交も深まり、『宮沢さん』にだっこして眠ったり、『ぬーちゃん』のぷっくりお腹を枕にしたり、結構上手くやっている。

寒いと言えば、お外の猫たち。『ファイト』と『ロッキーママ』に寒い思いをさせてはならじと、使ったホカロンは山と積み上げられた。一日に1室9個という消費量。1回3個を一日3回取り替える。3つある特別室のどれに誰が入るかは2匹の気分次第なので、空いている部屋にもホカロンを敷いておくことになる。おかげで、『おばあちゃん』は毎日、新聞の折り込みチラシで、ホカロンの値段の比較研究に余念がない。
お部屋は温かくでも、やはり窮屈と見えて、『ファイト』は『おばあちゃん』の朝湯とnecoの夜中の長風呂の1日2回、必ずお伴をしにやってくる。お風呂から出た後も、しばらくは蓋の上で長々と寝そべっている。

2003年も不景気風は吹き止まないのだろうが、猫のいる家に吹く風は、木枯らしも不景気風も、ほんのりと温かい。そうですよね、みなさん。