国交正常化の余波 (H14.11.4)

ウッドデッキが完成した途端に結ばれた1階組と2階組の友好条約は、今のところ何とか守られています。

寝る時は元通り2階に引き上げる2階組は、早朝から「1階へ行かせろ〜」と矢の催促。1階へ行けば、食べ物にありつけることを知ってしまったのです。声の主、誰だと思います?何と『隣の宮沢さん』なのです。
そうそう、neco家では近頃『隣の宮沢さん』と呼ぶことは希有になってきました。『分家』だの『ちびた』だの、ニックネームもいくつか付いていましたが、最近ではもっぱら『ズンズン』と呼ばれています。他の猫どもの脅しも意に介せず、どこへでも怯むことなく、ズン、ズン、と前進していくのがこの名の由来。
この『ズンズン』のモーニング・コールで、しぶしぶ起き出し、部屋のドアを開けてあげると、『ズンズン』と『らーちゃん』が脱兎のごとく、階下へ降りて行きます。『エリちゃん』はお寝坊ですから、『ぱぱちゃん』がベッドを出るまでおつきあい。『ぱぱちゃん』がお風呂に入っている間は、のんびり身繕いです。さあ、『ぱぱちゃん』がお風呂から戻ってきました。すると突然、甘〜い声を発しながら『ぱぱちゃん』ににじり寄る『エリちゃん』。体をお風呂上がりの温かい素肌にこすり付け、鼻を舐め、ついでにかじりながら、うっとりと『ぱぱちゃん』の顔を見上げます。これは毎朝の儀式。ただし、『ぱぱちゃん』が寝坊をして、朝風呂を省略すると、この儀式は行われません。何が『エリちゃん』をそうさせるのか、石鹸の香りでしょうか、温められた肌でしょうか。朝お風呂に入るのは『ままちゃん』も同じ。ところが、『ままちゃん』相手には、この儀式は決して、間違っても、執り行われないのです。何とも不思議ですが、お陰で『ぱぱちゃん』はますます『エリちゃん』にメロメロになるのです。『エリちゃん』はこの儀式を終え、ようやく『ぱぱちゃん』と一緒に階下に降ります。

『ズンズン』と『らーちゃん』が1階に姿を現したことで、2階のドアが開いたことを知った『宮沢さん』は、さっそく2階にやって来ます。あたかも自室のごとくベッドに上がり、朝の光を浴びながら食後の一眠り。しばらくすると『トンちゃん』がやって来て、開く窓はないか、一つ一つ点検して回ります。『エリちゃん』の度重なる脱走で、警戒が厳重になった2階に開く窓などあろうはずもありません。ザ〜ンネンでした!続いて『ニセド』がやって来て、『エリちゃん』の食べ残しのドライフードを食べ始めます。尿道結石のお陰で、好きなドライフードがもらえない『ニセド』としては、至福の一瞬。でも「パリッ」という最初の一音で、何よりのご馳走の入ったお皿は取り上げられてしまいます。うなだれながら、しぶしぶ階下へ戻る姿の悲し気なこと、可笑しいこと。

こうして日中はほぼ全員が1階で過ごします。『トンちゃん』が『ズンズン』の頭に猫パンチを繰り出したかと思えば、今度は長くまっすぐな尻尾に戯れついて、反対に『ズンズン』の遠慮がちなパンチを喰らう、などなど、他愛のない小競り合いを繰り返しながらも、平穏な時が流れます。

ところが、最近、1階がそれはそれはオシッコ臭いのです。原因は、ハイ、『らーちゃん』のマーキング。1階も我がテリトリーとばかりに、あっちこっち、ところかまわずマーキングを繰り返しています。さらに、1階組が好んで過ごしていた場所、テレビの上とか、背の高い棚の上とか、クッションの入ったバスケットの中とかを占領するのです。これはどう見ても意識してやっているとしか思えない!マーキングの癖のない1階組は、クンクン匂いを嗅ぎながらも、マーキングで応酬することもなく、お気に入りの場所に居座る『らーちゃん』の姿を見つめるだけです。じっと我慢?と思いきや、堪忍袋の緒が切れると、まるで1階組全員でしめし合わせたかのように、『らーちゃん』に猫パンチの一斉攻撃。追いかけて追いかけて、2階まで撃退します。今までならば、これで再び2世帯住宅に逆戻りするところですが、なぜか今回は様子が違います。一旦は2階に難を逃れたものの、頃合を見計らって『らーちゃん』は1階に戻ってきます。1階組はさきほど2階へ追いやったことで満足したのか、『らーちゃん』の多少遠慮した立ち居振る舞いに溜飲を下げたのか、何事もなかったかのようにアッケラカンとしています。そして今では、『らーちゃん』のマーキングも治まってきました。

目出たし目出たし、という訳に行かないことが一つ。久方ぶりに家に入ってきた『ファイト』に、『らーちゃん』が飛びかかってしまったのです。年老いて枯れ木のような姿になったとは云え、その凛とした佇まいに、誰からも一目置かれていた『ファイト』、ヤンチャで傍若無人な1階組さえも敬意を表していた『ファイト』…こんな扱いは一度たりとも受けたことのない『ファイト』にとって、これは晴天の霹靂。神々しいまでのプライドを初めて汚された屈辱に、『ファイト』は二度と敷き居をまたがなくなってしまいました。『トンちゃん』に追い掛けられて以来、怯え続ける『ロッキーママ』と二人、この寒空をお外で過ごしているのです。ホットカーペットにストーブという冬仕様になった部屋の中で、若者はゴロンゴロンと茹だったトドのように横たわっている一方で、老体が北風にふるえている。とんでもないことです。毎晩、二人を無理矢理家に入れ、しっかり敵を遠ざけ、大好きなカニカマを大盤振る舞いし、温かい寝床に入れて体を撫でてやり…それでも手を離した瞬間に二人とも走って玄関に向かいます。お外の特別室に逃げるように舞い戻った二人を見ながら、毛布の下にホッカロンを挟む毎日。この堪え難い状況はいつまで続くのでしょうか。

冷たい石を抱え込んだような気分のところに、『キャラリン』と『クロちゃん』と『お友だち』の「これじゃない御飯をくださ〜い」「あったかいミルクもお願〜い」という声が聞こえます。