内弁慶 (H.15.4.9)

天気予報は見事に外れた!!昨日の強風に雨雲は吹き飛ばされ、台風一過のような清々しい青空の元、この春一番のあたたかさとなった。昨年は、観測史上稀にみる桜の早咲きに、お花見のチャンスを逸していた。今年こそはと勢い込んでいただけに、天気予報の雨マークに愕然としていたが、かくも見事に予報が外れると、喜びは一入。やっぱり、日頃の行いがいい?!
お花見弁当は、やはりデパ地下。吉祥寺まで車を飛ばして、あれこれ買い求める。ビールを持って、ジュースを持って、ポットを持って、ピクニックシートを持って、あ、それからエリちゃんの好物の焼き海苔とカニカマも…。

今回のお花見のお供は、宮沢さんとエリちゃんととっくに決めてあった。猫同伴のお花見はロッキーが最初だったから、猫たちは皆、あんなに喜ぶものと思っていた。ところが、続くぬーちゃん、トンちゃんにの様子を見て、いかにロッキーが特別だったかを思い知らされた。リードを付けた途端に匍匐前進どころか一歩たりとも動こうとせず、トンちゃんに至っては、お花見の間中、おばあちゃんのコートの中に隠れていた。今年の面子選びの条件は、『物おじしない子』。そして選ばれたのが宮沢さんとエリちゃんだ。宮沢さんに水色のリード、エリちゃんにはロッキーの形見の真っ赤なリードを付けて、2匹をキャリーに入れ、いざ出発!!

と言っても、特段桜の名所に行くわけでもない。駐車場があって、のんびりできる広場があればいい。目指すは『杉並病』で悪名の轟いた『井草の森公園』。車で10分とかからない。2匹の様子を眺めると、日頃威張ん坊のエリちゃんが宮沢さんの下敷きになって小さくなっている。
「狭いよね。公園に着いたら、すぐに出してあげるからね」
あっと云う間に到着。シートを広げるなり、文字どおりの花よりだんご。調達したお花見弁当に舌鼓を打つ。

えっ?猫たちがどうなったか?所狭しと並べた食べ物の間を走り回られては大変と、約束を平気で破ってキャリーに入れっぱなし。ところが、2匹は出してくれと鳴くわけでもなく、宮沢さんは隙間からきょろきょろと外の様子を伺い、エリちゃんは相変わらず宮沢さんの下で、小さくなっている。

お腹を空かせていた人間たちは、並べた食べ物を見る間に平らげ、いよいよ2匹の公園デビューの時を迎えた。
「さあ、出ておいで。気持ちがいいよ」
勇んで出てくるものと思い、2本のリードをしっかり持って、キャリーの入り口を開ける。あれ?
「さっ、出ていいよ。恐くないからね」
あれ??
「おいで」
あれれ???
2匹は微動だにしない。あれほど、脱走が大好きなエリちゃんも宮沢さんの下で蹲っている。
「じゃあ、だっこしてあげようね」
手にしっかり抱えてキャリーから出し、地面に下ろした途端、2匹ともUターンしてキャリーに逆戻り。大好きなカニカマや焼き海苔で釣ろうとしても、見向きもしない。それどころではないらしい。仕方がない。リードはしっかり持ち、キャリーの入口は開けっ放しにしておくことにした。
人間たちが食後のコーヒーを楽しんでいる間も、2匹はキャリーに入ったまま。結局カニカマは、鳩のご飯になってしまった。

それにしても、この2匹。やっぱり兄妹だ。日頃、男の子はむさくて嫌!!とばかりに距離を置いているエリちゃんが、宮沢さんにしがみついている。宮沢さんも、あたかもエリちゃんを守っているかのように、首に手を回し胸の下にかくまっている。その光景もまた、ほのぼのとしたものだった。