反撃の一発(H14.1.7)

『らーちゃん』がNecoのベッドで眠るようになった。
少し前から、ふいに部屋に入ると、『らーちゃん』がベッドに寝ているのに出くわしてはいた。決まって女王『エリちゃん』のいない時だ。夜もベッドに上がりたいのか、二間続きの部屋の境目までやってきて、ベッドを見上げて泣くことが多くなったが、ぱぱちゃんのベッドでぐっすり寝入っていた『エリちゃん』がすっくと起き上がり、耳をねかせて送る強烈な視線に、すごすごと引き返していた。もとより2階の2室は『らーちゃん』のテリトリー。『エリちゃん』の方が招かれざる客なのだが、先住者の既得権を振り回しては、『らーちゃん』を下僕のように扱っていた。見兼ねたNecoは、折りあるごとに『らーちゃん』をベッドに乗せるのだが、『エリちゃん』の動きに聞き耳を立てながら横になっても眠れるものではない。居心地も良くはない。隣の部屋の片隅に置かれた椅子の陣地に戻ってしまっていた。
昨年の大晦日に『らーちゃん』をお風呂に入れた。尻尾に湿疹が出たように思え、一度きれいに洗おうと『らーちゃん』一人だけのお風呂だった。怖がりの『らーちゃん』だが、たらいの湯舟にゆっくり浸かり、静かにバスタイムを楽しんでいるようだった。ドライヤーは恐かろうとストーブの前で乾かした毛はことのほか柔らかく、いい臭いがした。『エリちゃん』は嗅ぎ慣れないその臭いに興味を持って、『らーちゃん』に鼻を近付けてはクンクンしている。自分一人に手をかけてもらい、自分一人がいい臭いに包まれている──『らーちゃん』は自分が望まれてここにいることを、初めて知ったのかもしれない。1階の居間で一日中家族のだれかしらと一緒のその他8匹と違い、2階でぽつんと過ごすことの多い『らーちゃん』だが、年末年始休暇で家にいる家族との触れ合いがいっぱいあったことも自信回復の一因だったのかもしれない。相変わらず跳ねて遊ぶことはなく、本当に『ロッキーママ』──丸い目をますます丸くしておもちゃと格闘し、外では鬼ごっこに興ずる──の子かと訝しんでいるのだが、それでも歩き方が堂々としてきた。そしてNecoが乗せてあげたベッドで朝まで眠るようになった。
昨日だったか一昨日だったか、ベッドに近付こうとした『らーちゃん』に突進して猫パンチを食らわせた『エリちゃん』に、ついに『らーちゃん』が反撃の一発をお見舞いしたところをぱぱちゃんが目撃。自発的に『エリちゃん』の僕となっているぱぱちゃんだが、『エリちゃん』の日頃の威張りんぼう振りに心を痛めていたようで、この時ばかりは「らーちゃん、いいぞ」とエールを送っていた。夕べも朝までNecoのベッドで眠った『らーちゃん』。それに寄り添うように『エリちゃん』の寝姿があった。