憧れの招き猫 (H13.12.12)

初めて『招福民芸館』に行ったときから、脳裏に焼き付いて離れなかった招き猫がいる。完成度の極めて高い招き猫で、穏やかな表情の小振りな姿にもかかわらず、他を寄せつけないほど強烈な存在感があった。二度目に『招福民芸館』を訪れたときも、その招き猫は変わらぬオーラを発していた。33,000円という値段はどうでもよかったが、33,000円ないと我が家に連れ帰ることができない。以来、私の小銭貯金が始まった。そしてめでたく本日、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉、1000円札の入り混じった33,000円を、母に1万円札3枚と1000円札3枚にしてもらい、『招福民芸館』を訪問。その招き猫は私を待っていてくれた。岡馬 勲氏というアンティークドール作家の作品である。岡馬氏の工房は尾山台にあるという。できる限り早い機会に工房を訪ねてみたい。穏やかな流れるような曲線と繊細な線、程よくグラデーションの効いた色づけの小振りの猫。それでもエプロンを首元でしばる紐は綿入れのかなりの太さのある紐で、その紐の太さに負けないだけの強さのある猫なのだ。この猫にはこの太さの紐がなければならない。すばらしい調和。この猫がついに我が家にやってくる。何となく気が抜けてしまった。ふと隣の棚に目をやると、もりわじん氏の猫がいる。『創作市場』に紹介されている氏の猫がいずれも神格化され、私の目には異質、異彩、私の猫世界とはかけ離れた、別世界のものと映っていた。それでも氏の名前はなぜかしっかりインプットされていたのだ。今、ここにある氏の猫は別世界の猫ではない。他の猫と微妙なバランスを保ちつつ、そこにいる。『招福民芸館』の○○さんが、氏の作品の写真が載っているカレンダーを見せてくださった。クローズアップさせた猫の顔、その一筆一筆に、溢れるほどの情感が滲み出ている。凄い。氏のほんの一つか二つの作品の写真に、違和感を覚え、私には縁のない作家と思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。写真ではなく、直に作品に触れてみたい。そう思った。谷中の『福福亭』に行ってみよう。