★★★★ |
1988年6月25日 発行 |
お馴染み『ピーター・ラビットの絵本』シリーズ第7集に収められているお話。 ずるい年寄りの猫が、ある日、ねずみをお茶に呼びます。ねずみは正装してやって来ました。猫はねずみをテーブルに案内しますが、パンとバターを先に食べ、ねずみには落ちたかけらを食べるように言います。お茶も猫が先。これでは、デザートに自分が食べられてしまうと思ったねずみは… この本を開いた途端に、「あれ??」と思うだろう。見慣れたあのパステルカラーで細やかに描かれた絵とはタッチが全く違う絵が目に飛び込んでくるからだ。このお話は、著者がネリー・ウォーンという幼い少女にプレゼントした折り畳み式の手製の本がオリジナルだ。このオリジナル本は、麻布に絵と文字を貼付けたものだった。こうした手製本をオリジナルとするお話は他にもあるが、それらは、出版向けにふつうの本の形式に直されたが、この本に限って、著者は絵の描き直しに気乗りがしなかったという。したがって、本書に収められている絵は、オリジナル本のスケッチそのままだ。だが、このスケッチが素晴らしい。ポターが運ぶ筆の勢いが感じられ、躍動感と表情に富んでいる。色調も落ち着いており、彩色したところと線画のまま残されている部分とのバランスも素晴らしい。ポターの作品に新鮮な風を運んでくれる一冊だ。 |