★★★★

うそうそ時に
そのねこはやってくる

1999年9月22日 第1刷発行
著者:松風直美
発行所:戎光祥出版株式会社
定価:800円(税別)
ISBN4-900901-46-6
C0792

『猫三昧』でもお馴染みの、切り絵作家、松風直美さんが本を出版されました。
さっそくご紹介します。

夜でも昼でもなくて、夜でもあり朝でもある『うそうそ時』にやってくるその猫は、私たちのサポーター。心に明かりを灯したり、小指の赤い糸を結んだり、頑張り過ぎた人の肩を抱いたり……見つけようと思わなければ決して見つからないその猫は、時に、私たちの耳もとでそっと囁く。のんびりいこうよ、息つぎが大切なのよ……と。

『いろはまねき猫』など、松風さんの作品をご覧になったことのある方には、本書が彼女のこれまでの足跡の集大成であることがわかるだろう。彼女が猫の切り絵を通して、一貫して伝えたかったメッセージをここに読み取ることができる。彼女自身も、本書を「今の私がきゅっと詰まったもの」と評している。
今年の個展で、松風さんの猫の描き方がより繊細で、女性っぽく変化しているのを感じたが、本書の主人公の猫は、以前の猫のタッチで切り取られている。本書に込めたメッセージを伝えるには、やはりこの猫がピッタリだ。
実際の切り絵の作品を見ると、1ミリにも満たない紙の厚さが、影をつくり、画面に奥行きをつくり出すことがわかる。印刷にかけると、その陰影はつぶれてしまうのだろうか。本書では、その切り絵ならではの魅力を再現しきれていないのが残念だ。台紙と切り絵の間を広げる、ライティングを工夫する、あるいは、パソコン上で陰影をつくり出す、等々、技術的な改良が望まれる。

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