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東京猫町

1993年7月12日 初版第1刷
2000年4月17日 初版第5刷
著者:荒木経惟
発行所:株式会社平凡社
定価:2816円(税別)
ISBN4-582-27729-2
C0072

「猫が消えちゃったら 東京は廃虚になっちゃうんだろーニャア」…巻末の荒木氏の言葉だ。
確かに本書に収められている写真の猫を手で隠してみると、どれもこれも殺伐と見えてくる。またカメラを引いて撮った写真では、猫はどこかと、必死で探し、ようやく発見したときの安堵感。これは見つけられてほっとした為ばかりではない。猫の存在そのものが、その写真に写された光景自体を柔らかく、温かく、ほっとするものにしてくれるのだ。

この写真集には、巻末の荒木氏の言葉以外に、解説もなにも付いていない。いつ、どこで撮影されたのかというリストもない。それがまたいい。町がある、猫がいる、猫を振り返る人がいる、その人を見上げる猫がいる。それだけでいい。

「猫害」という言葉が生まれた。害は減らさなければならない。猫は室内で飼う。
道ばたでのんびり毛繕いをする猫に出逢う機会は、どんどん減っていくのかもしれない。東京は廃虚になるのかニャア。窓辺で外を眺める猫を見つけられれば良しとしなければならないのかもしれない。

それにしても、荒木氏の引きの写真は素晴らしい。

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