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2001年9月30日 初版発行 |
売れない作家のたった一人の読者は、飼い猫の民子だった。いつも作家の傍らに座り、原稿を読んでは励ますような視線を作家に送り続けた。長い長い間…。作家がようやく売れ始めた頃、民子は行方知らずになる。小説も仕上げにかかった頃、やつれ果てた民子が作家の元に戻ってきた。一言「おめでとう」と言うために。 原作は、マルハペットフード創立十周年記念のCMのために浅田次郎が書き下ろした作品だ。浅田氏自身の実話に基づいて書かれたものだという。文字だけでいえば、原稿用紙ちょうど一枚の小品である。だが、その少ない言葉が描き出す時の流れと思いの深さは、読み手を圧倒する。わずか400文字がいかに多くを語るか、改めて思い知らされた。 |