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★★★★

ソクラテスになった猫

2005年10月20日 第1刷発行
2006年4月30日 第2刷発行
著者:左近司祥子
発行所:勉誠出版株式会社
ISBN4-585-05335-2
C0095

猫を愛する者が、猫に惹かれるのは、猫たちの優雅な曲線を描く肢体、やわらく艶やかな毛並み、愛らしく、時に鋭く光る目、といった外的なものばかりではない。独立心を失わず、凛として、自分の生を自分らしく全うする姿に、魅せられるのだ。それは、自分の置かれた境遇や、他者との関わりに一喜一憂し、必死で自分探しをしなければならない人間が、求めて叶わない姿なのではないだろうか。
そんな猫たちの生きようを、哲学者であり、41匹の猫たちと暮す著者が、哲学的視点から分析する。
ソクラテスの『無知の知』に始まり、猫と人間の共同体のあり方、欲望の差異を考察していく。
欲望は人間の発展の源泉であると同時に、幸せな生の最大の障害でもある。猫と人間の欲望を隔てるものを、時間の捉え方においたところは、特に興味深い。
このように書くと、難しい哲学書のように思われるかもしれないが、共に暮す猫たちのエピソードを交えながら、エッセイのように読める一冊だ。

毎朝4時に起きて、好みのご飯を持った41枚のお皿を用意する著者の、決して薄められることのない愛情に、脱帽するばかりだ。

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