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2001年12月20日 初版発行 |
この写真集には3つの被写体がある。猫、下北沢、そしてフジ子・ヘミングさん。「下北沢」と「ネコ」の共通点は「自由さ」だと、著者は語る。そしてフジ子・ヘミングという人物もまた、自由さの中でダイナミックに生きている。 …「ネコ」を単なる愛らしい生き物とは見ていませんし、また「ネコ」をありのままの姿以上に美しく撮りたいとも思いません…という著者が切り取る被写体の表情は深い。それぞれの因果を背負って生きる猫たち。「下北沢」という同じ街を背景に描き出されたからこそ、その因果が一層鮮明になる。一匹一匹の猫たち…それは私たち自身でもある。 蛇足ながらフジ子・ヘミングさんについて簡単に紹介しておこう。スウェーデン人の画家(父)と日本人のピアニスト(母)の間に生まれたフジ子さんは、ピアニストとしての将来を嘱望されながら、16才の時に右耳の聴力を失う。両親は5才の時に離婚。赤貧の中で、ドイツ留学時代を送る。その後、左耳にも障害を持つようになるが、こよなく愛する動物たちに支えられ、ピアノを弾き続ける。60才を過ぎて脚光を浴びた遅咲きのピアニスト。彼女のピアノの音が、彼女の人生を如実に語る。下北沢在住。 |