★★★★★

Orlando
The Judge

1950年 初版発行
1970年 3刷発行
文・絵:Kathleen Hale
発行所:John Murray
ISBN0-7195-0591-7

Kathleen Hale 作 "Orlando" シリーズの中の一冊。

町中が『消えたチーズ』の話でもちきり。ゴーゴンさんのチーズが消えてしまったのですが、容疑者として逮捕されたのが、ゴーゴンさんと一緒に仲良く暮してきたゾラさんだったのです。もちろんゾラさんは否定しているし、ゴーゴンさんもそんなことはあり得ないと訴えています。何とかゾラさんの無罪を証明したい、と考えていたオーランドに、思い掛けないチャンスがめぐって来ました。裁判所の判事さんが病気で、オーランドが代わりに裁判を引き受けることになったのです。オーランドは、3匹の子猫に、真犯人を探すように命じます。さて、裁判の行方は……

連日あふれる程の殺伐としたニュースに、心が異常乾燥。もう少しでひび割れる、という時に手にしたのが本書だった。ページをめくるごとに、顔の緊張がほぐれてくるのがわかる。頼りになるオーランド、やさしさ溢れる妻のグレース、やんちゃで無邪気な子供たち……ステレオタイプのような設定だが、一人一人のキャラクターが生き生きと描かれ、思わず笑みを浮かべながら、素直に彼らを受入れてしまう。それどころか、この一家のありように、焦がれている自分に気づく。オーランド一家を取り巻く登場人物の描写と配置も絶妙だ。オーランド・シリーズの魅力は、ストーリーそのものよりも、登場人物にあるのかもしれない。彼らのささいな行動が、何故か胸にしみ入る。オーランド一家は、本書が発行された1950年の家族を映したものだったのだろうか、それとも、当時でさえ、こうありたいという願望の投影だったのだろうか。


HOME > 猫本 >Orlando The Judge