6編を収めた2作目の短編集。『俺』という一人称、すなわち正太郎視線で綴られたものが3編と、主人公『あたし』が一人称になった人間目線ものが2編、三人称で書かれたものが1編。正太郎目線の物語は60〜80ページの中編と言っても良い。これがその他の3編と交互に収められている。私が正太郎の短編を読むのは、これが3冊目で、このリズムにも慣れ、戸惑いなく読むことができた。
本書の特徴は、宇宙都市を舞台にしたSF感覚の作品が『番外編』として入っていること。
無機質な未来の光景に、極めて人間(?)臭い(=有機質の極地の)正太郎やサスケ、桜川ひとみに親父さんがいつものように登場し、そのコントラストが笑える。そしてほっともする。今でさえ、人と人の繋がりが希薄になり、生の声でのコミュニケーション能力が悲しいほど低下してきているのに、ここに描かれた22世紀に突入した世界で、こんなにも人間らしいドラマが繰り広げられているのだから。事件はともかく、これから先の世の中、こうであって欲しいと願わずにはいられない。
いつもながら、どの作品にも、事件の裏側にもの悲しい人の心情がしっかり書き込まれていて、あっという間に読み終えてしまっても、エッセンスの程良い重みが胸に残る。
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