1994年に創刊された猫文学紙『ねこ新聞』に掲載された寄稿記事から、40名の著名人のエッセイをピックアップして収録したのが本書である。
1編が新書判3〜4ページという長さに統一された、文字通りのオムニバスだ。群ようこ、浅田次郎、里中満智子、池田理代子、山田洋次、加藤剛をはじめとする作家、漫画家、イラストレーター、俳優、映画監督などが名を連ねている。
へえ、この人も猫好きだったんだあ、と知れば急にその人が身近になり、その人が丸ごと判ったような気になるのは、猫好きの性。
それぞれが描き出す猫との関わり、エピソードを追体験するように読み、唸ったり、深いため息をついたり、涙をこぼしたり。
それぞれの猫に相対する距離感や、視点の置き処の微妙な違いを発見するのも、また興味深い。
さらに、40の異なる文体や表現を味わえるのも、オムニバスならではだ。
さらにさらに、多くの著者が、猫をテーマにした作品を執筆していることを知ることができ、猫本探索の良き水先案内ともなる。
献身的に人に尽す犬を愛するのは頷けても、これといって役にも立たない猫に、どうして人はかくも惹き付けられ、愛さずにいられなくなるのか……あとがきに資生堂の名誉会長、福原義春氏が一考を傾けているが、その不思議が、本書のタイトル『猫は魔術師』となったのであろう。
猫を愛する気持には社会格差も性差も年齢差もない。格差の是正が叫ばれるが、あらゆる差の入り込む余地のないところに、猫は存在するかもしれない。
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