★★★★ |
二人のおんな 1951年8月25日 発行 |
人はいいが、およそいい加減に暮らしている庄造。その庄造は、半ば周りのお膳立てで、最初の妻を追い出し、金回りの良い親戚筋の娘を後妻に迎える。そんな庄三がただ一つ執着するのが、猫だった。先妻は、この猫を引き取ればいずれ猫会いたさに庄造が戻ってくるのではないかと思い、後妻の嫉妬を煽ってまんまと猫を手に入れる。猫など決して好きではなかったはずの先妻、猫を手放してしまった庄造、猫恋しさが日に日に募る庄造を目の当たりにする後妻…猫を中心に、庄造と二人の女の心の動きが見事に描写された作品。 本書は著者が表現し続けていた『隷属』への希求、それを諷刺画に仕立てた作品だと見る向きもあるだろうが、我々猫をこよなく愛する者にとっては、文字どおり、額面どおりを素直に受け入れ、共感し、楽しむことができる作品だ。 人は何かに隷属することの中に幸せを見い出すのであれば、猫に隷属する我らは何という幸せ者なのだろう。 |