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2000年6月30日 初版発行 |
全編読み終えるまで、内容も分からなければ、評価もできない文芸書…買うか、やめておくか、その判断は何によるのだろう。猫がらみの本だと、取り敢えず買ってしまう私だが、本書を買うことに逡巡はなかった。 文才はあれど、人見知りで取材することが苦手な新聞記者ティベが書く記事は、町の猫の話題ばかり。これではニュースにならないと、首になりそうな状況だ。そのティベの家に、元は猫だったという女の人ミヌースがやってくる。奇想天外な話だが、ミヌースの動作を見ていると、あながち嘘ではなさそうだ。しかも、猫たちと自由に話ができる。そのミヌースが、猫たちのネットワークを使って、日々、ティベにニュースやスクープを持ってきてくれるようになった。やがて、町一番の有力者の、信じられない側面が報告される。これこそ大スクープだが、猫たち以外に証人もいなければ、証拠もない。さあ、どうする? 思いも寄らない設定で始まるストーリーは、テンポよく、リズミカルに進んでいく。 作者のシュミットは、『オランダんの子どもの本の女王』と称えられ、アンデルセン賞をはじめ、さまざまな賞を受賞している。一旦読み始めると、ページを繰るのが加速度的に速くなり、最後まで一挙に読んでしまうのは、シュミットの無駄のないストーリー・テリングのなせる技だろう。 本書は、映画化され、2004年5月21日〜30日、プランタン銀座で上映される。 |