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1998年12月3日 第一刷発行 |
ある朝、編集者の自宅に妙な原稿が投げ込まれた。その原稿たるや、何かの悪ふざけか、暗号か、いずれにせよまともに読むことができない。編集者は暗号解読に経験のある『私』の元に原稿を持参する。『私』は、その妙な文字の配列が、タイプライターのキーのミスタッチによるものだと気付いた。しかも、まるで動物がキーを打ったような…。そう、猫がしたためたものなのだ! という前振りで始まるこの本は、猫の猫による猫のための『家乗っ取り指南書』なのである。家の選び方に始まり、家の中に入り込む術、いかに人の心を操り、猫主導の生活を獲得するかが事細かに書かれている。裏を返せば、我々猫に溺れる者の心理描写にほかならず、ただただうなるばかり。要所要所に巧みに挿入されたツィツァ(『私』の隣家の猫)の写真がストーリーと絶妙に溶け合い、この絵空事のような設定事体が現実味を帯びてくる。日本語訳もこなれており、耳もとで猫が内緒話しで教えてくれているような錯角に陥る。最高!! |