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★★★★

夏への扉

1979年5月31日 発行
2005年7月31日 57刷
著者:ロバート・A・ハインライン
発行所:株式会社早川書房
ISBN4-15-010345-3
C0197

発明好きの技術者である主人公は、家庭内の雑事をすべてこなすロボットを開発。共同経営者と会社を起こすが、技術畑一本の主人公は、共同経営者と婚約者の共謀により、すべてを失うことに。そして30年間の冷凍睡眠に入れられてしまう。30年後、目覚めた主人公は、過去の失敗を修正するためにタイムマシンで過去に戻る。30年先を実体験してきた主人公は、小気味良く過去を塗り替える。そして再び30年間の冷凍睡眠に……。

本書が執筆されたのは、1957年。13年後の1970年を書き出しの舞台に選んだ。冷凍睡眠から目覚めたのは2000年。私たちは、1970年も、2000年も経験済だが、残念ながら、ハインラインが描いたロボットも、冷凍睡眠もまだ夢のままだ。

およそSFには縁のない私が本書を手に取ったのは、『猫三昧』の読者の方から薦めていただいたから。さっそく本は入手したものの、2年半もの間、最初の数ページにしおりが挟まったまま、枕元に積み上げられていた。つまらなかったわけではない。最初の数ページで、その設定の面白さに興味をそそられた。先が続かなかったのは、毎度の移り気のせいだ。そして、この程、しおりは最終ページまで進んだ。

ハインラインは世界三大SF作家の一人で、中でも本書の評価は高いようだが、SFとしての本書の評論は、アマゾンを参照していただくとしよう。私は、猫本としての本書を少し語ってみたい。

登場する猫、ピートは主人公の愛猫。ピートがストーリー展開の大きな鍵を握るわけではないが、ピートの存在によって、主人公の人柄が浮き彫りになる。発明に没頭する技術者は、人情味に欠けた変わり者のイメージがつきまとうが、ピートに寄せる思いが、そのステレオ・タイプのイメージを払拭してくれる。
冬場は雪に埋もれるコネチカットで、ピートは家中の扉を開けては、夏を探す。必ず『夏への扉』があると信じているのだ。ピートの思いを、主人公も自分になぞらえる。本書のタイトルにもなった『夏への扉』。ピートの存在は、この下りだけでも十分ではないか、私たち愛猫家にとっては。


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