Puss in Boots Puss in Cowboy Boots |
【ストーリー】 粉屋の末息子が父親の遺産として受け取ったのは、猫一匹だけ。使い道のない分け前に、がっくり肩を落とす末息子に、猫はこう言います。「わたしに袋と長ぐつを作ってください。そうすればあなたの分け前もそう悪くないことが分かりますよ」。 |
★★★★ |
1996年11月15日 第1刷発行 |
この小気味の良い痛快なストーリーを引き立てているのが、マーシャ・ブラウンのオシャレな絵だ。ブラックの線画に、山吹色、コーラル・ピンク、グレーの3色で色付けされた絵は、シックでありながらゴージャス、そして動きがあり、何度眺めても飽きがこない。 |
★★★★★ |
1980年5月20日 発行 |
ハンス・フィッシャーと言えば『こねこのぴっち』で御存知の方も多いだろう。 作者の溢れ出るイマジネーションをそのまま映すような、勢いとリズムと流れのある筆致は、見る者の胸をワクワクさせてくれる。使われている色は4色。その色の向こうに、森の緑の重なりや、宮廷のきらびやかな光が見えて来るから不思議だ。 ハンス・フィッシャーは、語りも優れている。このお話の中では、ところどころに舞台裏の打ち明け話をはさみ、作者と読者の間に、内しょ話をする緊密さを作り出している。また、他の作家同様、三人称で書いていながら、猫にしっかりスポットライトが当てられているのを感じる。 言葉のリズムの妙は、訳者、矢川氏の力もあってのことだろう。 |
★★★★ |
2000年10月31日 初版発行 |
1966年イタリアのトレントに生まれたジュリアーノ・ルネッリが描いた『長ぐつをはいたネコ』は、モダンな印象を与える。ファッションの都、ミラノで絵を磨いたためだろうか。昔のお話のはずなのに、同じことが、今、ここで起こっても不思議がないような錯角を覚える。猫が履く長ぐつは鮮やかな朱色で描かれ、強烈なイメージとして目に飛び込んでくる。最後の「してやったり」という猫の表情が小気味良い。 |
★★★★★ |
1990年1 初版発行 |
貴族のような出立ちの、いかにも知恵者という感じの猫が、精密な筆致で表紙一杯に描かれている。うん?表紙にタイトルがない!!裏返してみると、ようやくタイトルが見つかった。そう、この表紙は、見開きで描かれているのだ。 精密でありながら、全体に丸い印象のイラストに、どことなく馴染めずに読み進めていった。ところが、次第にこのイラストの虜となっている自分に気付いた。登場人物は表情豊かで、童話特有のシンプルな文章の向こうに、それぞれの人物の性格が手に取るように見えてくるのだ。色彩は淡く、美しい。そして何より夢がある。ラストシーンでは、私自身も豪奢な宮殿で、一緒に乾杯をしているような気分になった。 |
★★★ |
2002年 初版発行 |
デザイナーであり、イラストレーターでもあるスティーヴ・ライトは、マチルダという名の猫と一緒にニューヨークで暮らしている。マチルダが、本書の制作に大きな役割を担ったことは言うまでもない。ライトは、19世紀のフランス・ロココの画家、フラゴナールの手法と、同じくフランスの装飾性豊かな壁紙を研究。そして、自ら様々な色を用いて、たくさんのパターン・ペーパーを用意した。これらをコラージュし、輪郭を鉛筆で描き、本書のアートワークを作り上げていった。主人公の猫には、フランスの田舎の、古い布が用いられている。時の流れの中で染みができ、ところどころ朽ちた布は、猫の貧しかった過去と非凡な知性を表現するのにピッタリだったと、ライトは言う。パターンペーパーや布をコラージュしたなら、原画はきっと、微妙な陰影を作っていることだろう。印刷することにより、ぺったりとした平面にしか再現されなかったことが残念だ。 |
★★★★★ |
2001年8月 米国版初版発行 |
The Golden Compass や The Subtle Knife 等の著者、Philip Pullman は、子供向けの本も手掛けている。この Puss in Boots は、大筋で原作に沿いながらも、新たなエピソードが加えられ、ひと味違った雰囲気を醸し出している。何しろ、ジャックが公爵ではないことが、王様にわかってしまうのだ。さあて、ジャックはお姫様と結婚できるのだろうか……お楽しみに。 絵を担当した Ian Beck は、Peter and Wolf, The Owl and Pussycat, Noah and the Ark などの絵本でもお馴染みだ。主人公の猫の表情を見ていると、一筋縄ではいかない、やり手の猫が、目の前にいるいような気分になる。1ページを3段に分けて描いてみたり、カットをコラージュさせたり、また吹き出しをつけたり、とページごとに変化があり、楽しい。 |
★★★★ |
2004年 初版発行 |
本書は、英語とスペイン語、二国語のテキストが付いているバイリンガル絵本シリーズの中の一冊だ。スペイン語圏からの移民の多いアメリカでは、学級文庫としての需要もあるようだ。 ストーリーは原作にほぼ準拠している。イラストは、スペインはバルセロナ生まれの Jose Luis Merino が担当。Merino は美術を学び、広告代理店やデザイン・スタジオ勤務を経て、1998年に自身のグラフィック・デザイン会社を創設している。Merino のイラストは、欧米の雑誌、新聞に多数掲載されており、多くの賞も受賞している。本書のイラストはシンプルで、モダン。そのシンプルさの中から、不思議なほど登場人物のキャラクターが読みとれるのは、さすがだ。 ちなみに、スペイン語のタイトルは、El Gato con Botas だ。 |
★★★★★ |
2002年 初版発行 |
本書は、『カウボーイ・ブーツをはいたネコ』という題名の通り、シャルル・ペローの古典的童話を現代のテキサス風にアップデートさせたものだ。 ある晩、いつものように『長靴をはいたネコ』を息子に読み聞かせていた著者、 Jan の目に、部屋の片隅に置かれていたカウボーイ・ブーツが飛び込んできた。それが本書誕生のきっかけだ。ストーリーはシャルル・ぺローの原作に準拠しているが、状況や登場人物の設定が現代のテキサス風にアレンジされている。王様の代わりに石油王、プレゼントした鳥もワイルド・ターキー、馬車の代わりにリムジン、といった具合だ。しかも、言葉遣いもテキサス訛り、といこだわりよう。 イラストを担当したのは、著者の御主人の Phil。飼い猫の Spatzle と Farfel 、そして太陽が照りつけるテキサス の景色にインスパイアされてイラストが完成した。 テキストとイラストの調和のとれた、とにかく愉快な一冊だ。 |
★★★★ |
文:Ladybird Bools Ltd. |
本書は、Ladybird Books
社の Read it yourself というシリーズの1冊。このシリーズは、子供達が一人で本を楽しく読めるようになるのを助ける目的で作られている。Puss
in Boots は、4段階に分かれたレベルの3に当たるが、それでも随分易しく、短くリライトされている。文字も大きく、老眼鏡の必要な向きには有難い。 文に比較して、イラストは見ごたえがある。子供向けに甘くすることなく、登場人物の表情が見事に描かれている。こうした絵を小さい頃から見ていれば、自然と審美眼が備わってくるのだろう。 |
★★★★ |
1998年 英語版第1版発行 |
本書は、Abbeville Press社の
The Little Pebbles というシリーズの中の1冊。このシリーズは、子供達が、素晴らしい童話の世界への最初の一歩として編集されている。文は易しくリライトされているが、ストーリーの流れはオリジナルに忠実だ。 登場人物は、いずれも親しみやすい優しい表情をしており、王様さえ、厳めしくなく、隣のおじさんのように身近に感じられる。童話の世界が私達を取り囲む日常の延長上にあるような気がしてくる。素顔の人喰い鬼が絵に描かれていないのも、こうした効果を狙ってのことかもしれない。 童話は、その描きようで、非日常の世界に遊ばせてもくれるし、自分も主人公になれそうな身近な出来事として、日常に彩りを添えてくれもする。そんなことを考えさせてくれた一冊だ。 |