★★★★

村上春樹とネコの話

2004年5月20日 初版第1刷発行
著者:鈴村 和成
発行所:株式会社彩流社
ISBN4-88202-888-3
C0095

しなやかで妖艶な美しさ、気高さの反対側に残虐性を隠し持つ猫。存在が不確かでありながら、人の心に確かな位置を占める猫。
愛猫家の著者が、同じく愛猫家で知られる村上春樹の作品を、『猫』を切り口に解析する。村上春樹の作品には、猫たちが絶妙に登場するが、その猫たちにスポットを当てていくと、作品間までも横断する村上春樹のテーマが鮮明に見えてくる。
本書の前半では、著名な作家をイヌ派、ネコ派に分け、三島由紀夫、萩原朔太郎、谷崎潤一郎等の作品と作家自身に『猫』を見い出していく。冒頭に記した猫の特性は、どうやらネコ派の人間に乗り移るようだ。作品の登場人物が、ひいては作家が猫に同化していく姿が鮮明に描き出される。

本を読むとき、あるいは人と付合うときの新たな視点を与えられたような気がする。「イヌ派」「ネコ派」で類型化すると、人を感覚的により深く理解できそうだし、それより何より、自分との相違を素直に受け入れることができるのではないかと思うのだが…

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