シェークスピアのドラマやヨーロッパの名画の登場人物を猫に置き換えるスーザン・ハバートの作品は、世界中の注目を集め、絶大な賞賛を勝ち取っている。そのスーザン・ハバートが、自身が愛して止まない映画を題材に描いた57点を収めたのが本書である。
1920年代の白黒映画から、莫大な予算をつぎ込んで制作したミュージカルまで、また、懐かしいウェスタンから最近のヒット作まで、スーザンの猫が主役を演じている。原作のタイトルや台詞をもじったキャプションも笑える。
茶トラ、サバトラ、黒白、白……登場する猫の毛色はさまざまだが、この役柄はこの色の猫しかあり得ない、と思わせてしまうから、スゴい。しかも、どの猫も、猫として不自然な表情はしていないのに、しっかりと役を演じ切っている。このチャレンジングな試みも、スーザン・ハバートの手に掛かれば、この通り。彼女の深い洞察力と確かな表現力に、改めて驚かされる。
猫の主人公を眺めながら、もう一度、原画を見たくなった。
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