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いとしの天使猫
マーベリック・クマ

2007年8月15日 初版第1刷発行
絵と文:久下貴史
発行所:株式会社世界文化社
ISBN4-418-07510-2
C8793

マンハッタナーズでお馴染みの久下貴史氏の初の絵本。
1986年に単身ニューヨークに渡った氏の孤独を癒し、尽きることのない創作意欲をかき立ててくれたのが、猫たちだった。1996年、氏はハウストン・ストリートのビル壁に巨大な一対の壁画を完成させる。これは、NYにおける氏の創作活動の中間決算的な作品であり、これを機に氏の名は広く知り渡るようになる。

本書は、フェデリコ、ミケランジェラに続く氏の3匹目の愛猫マーベリック・クマを偲んで書かれたものだ。上述の壁画のことも登場するが、クマはその1996年に氏の手に抱き上げられ、わずか2年で逝ってしまった。たった一つ願いが叶えられるならクマと会いたい、と氏は語る。ファンタジーの形をとりながら、その中にクマへの深い愛情と言い尽くせぬ、癒し尽くせぬ哀しみの込められた物語だ。

私は、猫たちと別れる度に思いのたけを文の中に吐露しながら、涙をさそう物語を読むのは大の苦手。タイトルから察しがつくと、決して手に取ろうとはしないのが常だが、この本だけは、なぜか躊躇なく買い求め、即座に読み始めて立て続けに3回読み返した。クマを失った氏の痛みは、私自身のたくさんの痛みと重なりながら、それでも氏と一緒にその痛みを受け止められるのはなぜだろう。生命力溢れる氏の絵のマジックかもしれない。


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