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こねこのバベット

2008年4月30日 初版発行
2009年3月21日 20刷発行
文:湯本香樹実
絵:酒井駒子
発行所:株式会社河出書房新社
ISBN:978-4-309-27007-4
C0071

仲良しの小鳥が死んでしまった悲しみに、くまは打ちひしがれる。
くまは小箱を作り、野の花を敷き詰め、小鳥を寝かせる。
その小箱をいつも持ち歩くくまに、森の仲間は「忘れた方がいいよ」と口々に言う。
すっかり引き蘢ってしまったくまは、ある日、やまねこと出逢う。
そして……

家族や友人の死ほど、人の心を大きく揺さぶるものはないだろう。
その悲しみは、あまりに個人的なもので、人はなかなか受け止めてはくれない。「忘れた方がいい」という慰めの言葉は、かえって悲しみを内に向けてしまう。
その悲しみを癒すのは、悲しみから逃げずに見つめ続けて過ごした時の流れと悲しみを共有できる友や家族なのだろう。

タイトルの順番の通り、本書の主人公は「くま」だが、「くまとことり」ではなく、「くまとやまねこ」とあるように、やまねこが果たす役割は大きい。
人の深い悲しみに出会ったとき、私はやまねこであれるだろうか。

「死」という生きとし生けるものが決して逃れることのできない大きな命題と、美しく、ファンタジックでありながら正面から向き合っている本書は、読んだ者の心深くに沁み入り、いずれ自身が「くま」となった時の、強い支えとなるだろう。
初版が発行されてわずか1年足らずの間に、20刷と増刷を重ねているのも頷ける良書だ。


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