*私は生きていることが好きだから他の生きものも皆んな好きです。
*私は動物や虫は何でも好きです。中野でも立教大学裏の大原でも、いま住んでいる千早町でも、いつの時代でも猫がいました。
*狭い土管のような家の縁側に手製の鳥かごを並べて鳥を飼い、そのうえ猫も飼ったんです。彫刻家の石川確治がそれを見て、子どもも養えないくせに、鳥や猫を飼うなんて、もってのほかだと忠告しました。
*猫は飼いましたが、犬はあまり人間に忠実なので、見るのがつらくて飼ったことはありません。
これは、『ひとりたのしむ』と本書から抜粋した熊谷守一氏の言葉だ。これ以上の説明など、必要ないだろう。
本書には、熊谷氏が残した猫の油彩、水墨、デッサン、メモ等、70図版が収められている。巻末には、熊谷守一氏の年譜と、長男、熊谷黄氏による「父と猫と家族と」と題する回想が収録されている。一点一点の作品を味わい、ところどころに挿入された熊谷氏の短い言葉を噛み締め、猫と昼寝をする熊谷氏の写真に写った姿を見れば、心の根っこが共感に震えることだろう。
|