拡大画像
★★★★★

荒野にネコは生きぬいて

2008年3月1日 第34刷発行
作:G. D. グリフィス
訳:前田三恵子
発行所:文研出版
ISBN978-4-58081481-3
C8397

久しぶりに良書に出会った。
本書を貸してくださった猫三昧仲間の方には感謝至極。

主人公は、生後12週で捨てられた子猫だ。
都会の飼い猫として育ってきた子猫がある日突然に放り出されたのは、英国西南端に広がるダートムアと呼ばれる高原地帯 。
ヒースが茂り、花崗岩がゴツゴツする泥炭地で、イングランドの中でもとりわけ自然環境の厳しい地域である。
寒さ、飢えに加えて、洪水や火事が子猫を待ち受ける。
一つ一つの試練に勇敢に立ち向かい、生き抜く猫の一生が描かれていく。

猫への感情移入を抑え、状況を緻密に描写することに徹したグリフィスの筆さばきが、猫への畏敬の念を読者に抱かせる。
人に対する不信感と依存心、自然への帰巣本能と恐怖感……両極の狭間で揺れる猫の心理は、克明に描かれた状況が雄弁に語る。

生き抜いた命は、何と清々しいことか。
私も最期の時に、自分自身と私を見送る人たちを、こんな清涼感で包み込みたい、そういう生き方をしたいと願う。


HOME > 猫本 >荒野にネコは生きぬいて