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消える密室の殺人
猫探偵正太郎上京

平成13年2月25日 初版発行
平成17年10月20日 3版発行
著者:柴田よしき
発行所:株式会角川書店
ISBN4-04-342806-5
C0193

猫の正太郎は、同居人であるミステリー作家、桜川ひとみの急な思いつきで、上京することになった。作家先生は、編集者の手配で、高級ホテルに泊ることになったが、正太郎は、出版社で夜を過ごすことに。折しも、猫のCDブックを撮影中だったのだ。撮影場所は、金網を張り巡らせた庭の一角。大勢の出演猫と撮影スタッフのいる仮設小屋に、正太郎は放り込まれた。ここで、殺人事件に遭遇してしまうのは、ミステリー作家の猫ゆえか。仮設小屋の入口を除き、まったく外界から隔離された撮影現場。さあ、正太郎、この謎をどう解く?

密室殺人という本格ミステリーに、生い立ちや境遇の異なる多くの猫達を見事に絡ませた、楽しく厚みのあるストーリーとなっている。殺人の被害者と加害者、その動機にも、登場する猫をダブらせるという演出には脱帽だ。

密室での毒殺という犯行も、著者の生きとし生けるものへの深い愛情によって、凄惨さよりも温かさをもって描き出される。
これまで、著者、柴田よしきさんを正太郎の同居人であるミステリー作家、桜川ひとみ重ねて読んできたのだが、さまざまな人生(猫生)が作ったその時の人(猫)の有り様を、素直に、懐深く受け入れていく正太郎こそが、柴田よしきさん、そのものなのかもしれない、と今思っている。


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