★★★★ |
1998年11月10日 発行 |
パリのアパルトマンに暮らすサム。そのアパルトマンで、サムはカーチャという猫と知り合いになる。カーチャは、アパルトマンの外に出たことがない。サムと話をするうちに外の世界をさすらってみたくなったカーチャは、ある日、サーカス団にまぎれて、アパルトマンを出ていく。5年という歳月を経て、サムの元に一通のメールが届く。それは、画家となったカーチャの個展開催の案内だった。カーチャは、放浪の旅の中で出逢った個性溢れる猫たちのポートレートを描き続けていたのだ。本書は、その個展のカタログに掲載するデッサンとエクリチュールをサムが人間の言葉に訳したものである。 こんな設定の中で、紹介されていくとびきり個性的な猫たち…読み進め、一人一人のデッサンを眺め続けているうちに、いつの間にかカーチャの放浪の旅に引きずり込まれている自分に気付く。モンパルナスのアンニュイ、コートダジュールの宝石をちりばめたような夜の喧噪、南仏の森の湿った木々の息づかい…本から顔を上げたとき、今、自分がどこにいるのか、とまどうことだろう。 本書は、フランス在住の作者、到津伸子氏のフランス賛歌であり、イトウズ・ワールドへのイントロダクションでもある。 本書は、書店では入手できなくなっています。 |