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Harry Kitten and
Tucker Mouse

1986年 初版発行
文:George Selden
絵:Garth Williams
発行所:Farrar, Straus and Giroux
ISBN 0-374-32860-9

ひとりぼっちになってしまった幼いネズミ、タッカーは、ゴミ収集車を逃れて走り込んだ薄暗い路地で、子猫のハリーに出会います。ハリーもまた、ひとりぼっち。思わず闘いのポーズをとったタッカーに、ハリーはこう言います。お互い死ぬほどお腹を空かせているのに、なぜこの上闘って、さらに惨めにならなきゃならないの、と。2匹は、『家』を求めて、ニューヨークをさまよいます。エンパイア・ステート・ビルディングの地下、下町の船着き場、高級住宅街にあるグラマシー公園……でも、タッカーはつぶやきます。「ぼくたちが生きていける場所はどこにもないよ」。ハリーは弱気なタッカーを励ましながら、さらにさまよい、ついに2匹は『家』を見つけます。安全な場所と信頼できる家族のいる『家』を。

本書は、The Cricket in Times Squareに登場するハリーとタッカーの出会いを描いたものだ。Cricket in Times Square の発行から26年後に出版されている。
タッカーが自分の名前をつけようと、あれこれ考えるシーンから物語は始まる。タッカーは名前が欲しかった。名前があれば、たとえ踏みつけられようと、少なくとも誰が踏みつけられたのかわかるから……寄る辺のない、幼いネズミにとって、名前こそが自分を自分たらしめるたった一つの拠り所だった。そして自分に与えた最高の名前、それがタッカーだった。
そんなタッカーが出会ったのは、同じように幼く、非力で、ひとりぼっち、でもハリーという名をもつ猫だった。
2匹の『家』探しは、冒険物語でありながら、生きる知恵と2匹心の絆、そして『家』とは何かを描き出している。ガース・ウィリアムズが描く2匹の幼い目の表情も、読む者の胸を鷲掴みにする。


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