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ハーニャの庭で

2007年4月 初版第1刷発行
作:どい かや
発行所:偕成社
ISBN978-4-03-232230-9
C8793

猫のハーニャの住む山の途中の小さな家には、小さな庭がありました。ハーニャはその庭が大好き。季節の移り変わりと共に、庭の木々や草花が違う色で庭を染め、たくさんの生き物たちが集り、通り過ぎていきます。

わたしたちの庭には、むかしからずっと、
たくさんの いきものたちがすんでいて、
たくさんの おきゃくさんが やってきて、
旅の とちゅうの ものたちが たくさん とおりすぎているんだよ

ハーニャは、お母さんからいつもそう聞いていました。ハーニャはその言葉を体全部で理解し、これからもずっと同じだと、子供たちに伝えようと思います。

一つの庭を舞台に、季節の移ろいと、そこに息ずく命をを優しく柔らかく温かく描き出した作品。作者のどいかやさんが、カバーの折り返しにこう書いている。

自分の庭だと思っていた その場所は、
ほんとうは とっくに、もうずっと前から、
誰かの住まいで、誰かの通り道でした。

ちいさな 美しい先住民たちに。

私たちは、自分が住んでいる家に、庭に、こんな思いを寄せたことがあるだろうか。自分の家、自分の庭、全部自分一人の物、と勘違いしているのではないだろうか。そこにいる、やって来る、通り過ぎる命を閉め出したとき、家も庭も殺伐としたちっぽけな場所になってしまうのに……

訴えたい強い思いを、パステルの穏やかな筆致に託したどいかやさんの大きさを感じ、直情的な自分自身に恥じ入ってしまう。理屈はどうであれ、この絵本を読み、子供たちが、あるいは大人たちが、ハーニャの庭を愛せたら、それで十分なのだろう。


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