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★★★☆

方舟に乗った猫

2007年4月11日 初版第1刷発行
画・文:伴田良輔
発行所:株式会社パロル舎
ISBN4-978-89419-067-2
C8793

「猫たちは、私たち二本足で歩く人間をどう見ているのかしらね?」
今朝、母が何となく口にした疑問だ。
本書に登場する月猫の目には、『ほどほど』を知らず、真の知恵も勇気もない、みすぼらしい生き物と映っているようだ。
月に棲む月猫たちは、みな努力家で勤勉だった。とりわけ宮殿に棲む月猫たちは、寸暇を惜しんで学業に励み、それぞれがひとかどの者であった。
ある日、月猫の天文学者が天体望遠鏡を覗いていた時のこと、信じられない猫の姿を発見する。青い星に棲む猫たちだ。日がな眠りほうけているではないか。だが、決して愚かには見えない。彼らのそばで、せこせこ動き回る二本足には興味はないが、あの眠り続ける猫の存在が気になってしかたがない。月猫たちは、打ち捨てられていた方舟を修理して、青い星をめざす。

本書の絵は、伴田良輔氏独自の技法、フォトアンプランで作成されている。フォトアンプランとは、写真を紙に転写し、その輪郭を指でぼかしながら、周囲に鉄筆で新しい線を刻み、定着乾燥させるもので、幻想的な不思議な印象の絵に仕上がる。
その異空間の中で、ふと思う。
私たちは、月猫になりたいのか、それとも身近にいる青い星の猫になりたいのか、と。
月猫を目指す方が、我々人間には、はるかに容易だろうが、それでも、ひとかどの者になれるかどうか……ああ。


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