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The Grannyman

1999年 初版発行
作:Judith Byron Schachner
発行所:Dutton Children's Book
ISBN:0-525-46122-1

猫のサイモンは、うーんと歳をとったおじいさん。もう目も見えなければ、耳も聞こえず、歩くこともままなりません。かろうじて匂いが嗅ぎ分けられるだけ。
サイモンの長い人生(猫生?)は、楽しさと喜びで満ちていましたが、今や家族の助けなしには生きられません。
サイモンをやさしく撫でる家族の手に哀れみを感じ、サイモンはいたたまれなくなるのでした。
ある夜、これが最後の息、とサイモンが思った、正にその時、サイモンのお腹の上に、ふわふわと柔らかいものが触れました。
サイモンは必死に匂いを嗅ぎます。
それは小さな小さな仔猫でした。
そして、サイモンは……

家族の世話になるばかりで、自分の存在がむなしく思える。どんなに家族が優しくとも、優しければ優しいだけ、自分のふがいなさが身に沁みる……それはサイモンに限ったことではない。お年寄りが等しく味わっている切ない思いだろう。サイモンは、私たちの父母、祖父母に他ならない。
サイモンは家族の計らいで、仔猫を与えられる。仔猫の世話という役割を引き受けたサイモンは、不自由な体でかいがいしく仔猫の面倒を見る Grannyman (おじいちゃん)になっていく。
危ないから、大変だから、と私たちは高齢者から仕事や役割を奪いがちだが、それがどれほど酷なことかをサイモンは教えてくれる。

あたたかく、表情豊かな絵と、詩的な文で綴られた本書は、大きなメッセージを素直に心に届けてくれる。


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